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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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第29話 選んだ結果

 旧街道の分岐点は、以前より少しだけ賑やかになっていた。


 商人の荷車が通る音。

 狩人が獲物を担いで戻る足音。


 どちらも、ある。


 だが――。


「……なあ」


 街道脇で、二人の商人が立ち止まっていた。


「前よりはマシだが」


「完璧じゃないな」


 道の片側は整えられている。

 荷車は通れる。

 ただし、速度は出ない。


「全部真っ直ぐにできたはずなんだ」


「狩人が反対したんだろ」


「分かってる」


 納得していないが、理解はしている。

 そんな顔だった。


 一方、森側。


 狩人たちも、話をしていた。


「獣は、まだいるな」


「逃げ切ってはいない」


「でも」


 一人が、腕を組む。


「少し、警戒心が上がった」


「……人が増えたからな」


 これも、想定内。


 誰も怒ってはいない。

 だが、全員が百点でもない。


 その日の午後。


 ミアとアレンは、再びその道を訪れていた。


「……来てるわね」


 ミアが、周囲の様子を見る。


「はい」


「不満、というほどじゃないけど」


「小さな違和感ですね」


 アレンは、静かに答える。


 商人の一人が、二人に気づいた。


「あんたたち」


「はい」


「この前の判断、

 間違ってたとは思ってない」


 ミアが、少し身構える。


「でも」


「もう少し、

 商人寄りでもよかったんじゃないか」


 狩人が、少し遅れて口を開く。


「いや、あれ以上やったら、

 獣が消えてた」


 二人は、視線を交わす。


 険悪ではない。

 ただ、噛み合っていない。


 ミアが、アレンを見る。


「……どうする?」


 アレンは、少し考えてから言った。


「何か、困っていますか?」


 商人が、首を振る。


「困ってはいない」


「狩りは?」


 狩人も、首を振る。


「できている」


 アレンは、うなずいた。


「それなら」


 一拍置く。


「今は、問題ありません」


 ミアは、思わず目を見開いた。


「それだけ?」


「はい」


 アレンは、穏やかに続ける。


「不満があるのは、

 “もっと良くしたい”からです」


「……まあ」


 商人は、苦笑する。


「否定はできないな」


 ミアは、歩きながら小声で言った。


「……今の、突き放した?」


「見守った、です」


「違い、分かってる?」


「はい」


 アレンは、前を見たまま言う。


「不満が出るのは、

 考えている証拠です」


 ミアは、少し黙った。


「……あなた、

 完全に一段上に行ったわね」


「そうですか?」


「そう」


 夕方。


 ギルドの掲示板には、

 小さな紙が追加されていた。


判断後、

小さな不満が出るのは正常


 誰が書いたかは、分からない。


 だが、それを見た冒険者の一人が言った。


「……なるほどな」


 納得する人が、少しずつ増えていく。


 宿への帰り道。


「ねえ、アレン」


「はい」


「全部、解決しないの」


「はい」


「嫌われるかもしれないわよ」


 アレンは、少しだけ笑った。


「それでも、

 歩けます」


 それで十分だった。


 選んだ結果は、

 完全でも、完璧でもない。


 だが。


 誰かが考え続ける限り、

 世界は止まらない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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