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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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第27話 書いてしまえば、真似できると思った

 レンバート冒険者ギルドの奥。


 小さな机を囲んで、

 ハロルドと数人の職員が、紙を前に唸っていた。


「……まず、ここ」


 ハロルドが指で叩く。


「“現地に着いたら、周囲を見る”」


「それ、当たり前じゃないか?」


「でも、書かないとやらない人がいる」


「……確かに」


 別の職員が、苦笑した。


 机の中央には、仮題が書かれている。


現地判断型案件・簡易指針(試案)


 ミアは、少し離れた場所からそれを眺めていた。


「……本気ね」


「はい」


 ハロルドは、正直に答える。


「このままだと、

 “あの人が来るまで待つ”空気が残ります」


「それは、よくない」


「ええ」


 ミアは、腕を組んだ。


「で、内容は?」


「とりあえず――」


 ハロルドは、読み上げる。


「一、通る人の動線を確認する

 二、危険でも“触らない選択”を考える

 三、全部やらない」


 ミアは、思わず笑った。


「……そのまんまじゃない」


「ですよね」


「名前は?」


「出しません」


 即答だった。


「出したら、

 “あの人のやり方”になりますから」


 ミアは、内心でうなずいた。


(分かってる)


 その頃。


 当の本人は、掲示板の前にいた。


「今日は、何もなさそうですね」


 アレンが、少し残念そうに言う。


「いいことよ」


 ミアは即答。


「今日は“あなたが動かない日”」


「……歩かない日ですか?」


「そう」


 ミアは、肩をすくめる。


「世界の練習日」


 アレンは、少し考えてからうなずいた。


「それなら、

 ここにいましょうか」


「え?」


「質問、来るかもしれません」


 ミアは、一瞬だけ言葉に詰まった。


「……あなた」


「はい」


「本当に、前に出ないわね」


「目立つと、

 歩きにくくなります」


「その発想がもう異常なのよ」


 午後。


 案の定、若い冒険者が二人、恐る恐る近づいてきた。


「あの……」


「はい」


 アレンは、穏やかに答える。


「昨日の件なんですが」


「はい」


「どこを直すか、

 迷ってしまって」


 ミアは、横で口を挟みかけて――やめた。


 アレンは、少し考える。


「……通る人は、

 どこを通りそうですか?」


「え?」


「一番、楽な道です」


「……あ」


 冒険者の目が、見開かれる。


「それを、少しだけ楽にする」


「全部じゃ、ないんですね」


「はい」


 冒険者は、深く頭を下げた。


「……分かりました」


 去っていく背中を見送りながら、

 ミアがぽつりと言う。


「ねえ」


「はい」


「それ、

 もう“マニュアル”よ」


 アレンは、首をかしげた。


「紙に書いてないです」


「そのうち書かれるわ」


「……困りますね」


 ミアは、笑った。


「名前が出なければ、平気でしょ」


「それなら」


 アレンは、少し安心したように言う。


「大丈夫です」


 夕方。


 ハロルドは、完成した紙を掲示板の端に貼った。


※試行中

現地判断型案件の考え方(抜粋)


 派手さはない。

 読まない人も多い。


 だが。


 “待つ理由”が、一つ消えた。


 その夜。


 ミアが宿で言った。


「今日、何も片付けてないのに」


「はい」


「世界、ちゃんと回ってた」


 アレンは、少しだけ微笑む。


「それなら」


「?」


「明日は、少し歩いてもいいですね」


「……結局歩くのね」


 ミアは、ため息混じりに笑った。


 こうして。


 一人の感覚は、

 名前を失ったまま、

 “考え方”として広がり始めた。


 それはもう、

 追いつける人と、追いつけない人を、

 はっきり分ける段階に入っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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