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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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第26話 少しだけ、うまくいった

 レンバート近郊、森沿いの街道。


 数日前にアレンから助言を受けた、

 若手冒険者パーティが現場に立っていた。


「……ここだな」


 剣士が地面を見る。


「罠があった場所」


「でも、今回は“全部やらない”んだよな」


 弓使いが念を押す。


「通る人が、

 どこを通るか」


「どこを通らないか」


 魔法使いが、アレンの言葉を思い出しながら続ける。


「それを、先に考える」


 三人は、しばらく黙って周囲を見回した。


 足跡。

 踏み固められた草。

 無意識に選ばれている導線。


「……ここだけでいいな」


 剣士が、慎重に言った。


「罠の跡、

 この辺だけ整えれば」


「他は?」


「触らない」


 少し緊張しながら、

 最低限の作業を行う。


 罠の残骸を除去し、

 足場だけを整える。


 派手なことは、しない。


「……どうだ?」


 しばらくして、

 三人は一度引いて、道を見る。


「……悪くない」


「前より、歩きやすい」


「でも、“やった感”は少ないな」


 弓使いが苦笑した。


「それでいいんじゃない?」


 魔法使いが言う。


「“何も起きない”って、

 たぶん成功だ」


 三人は顔を見合わせ、

 小さく笑った。


 その日の夕方。


 ギルドで報告をしていると、

 別の冒険者が声をかけてきた。


「なあ」


「?」


「今日の街道、

 なんか歩きやすくなってなかった?」


 三人の動きが、一瞬止まる。


「……そう?」


「気のせいかな」


「いや、気のせいじゃないと思う」


 冒険者は、首をかしげながら去っていった。


 剣士は、思わず息を吐く。


「……これか」


「これだな」


 誰かに褒められたわけじゃない。

 名前も出ていない。


 だが。


 ちゃんと、効いている。


 同じ頃。


 宿で、ミアがアレンに言った。


「聞いた?」


「何をですか?」


「この前の若手たち」


「……失敗しました?」


「逆」


 ミアは、少し嬉しそうに言う。


「“最近、あの辺楽”って」


 アレンは、少しだけ目を見開いた。


「それは……」


「うん」


 ミアは、うなずく。


「あなたがやらなくても、

 回った」


 アレンは、考え込む。


「……よかったです」


「でしょ?」


 ミアは、にやりと笑う。


「教え方、

 間違ってなかった」


 一方。


 別の宿の一室で、

 ガルドは地図を睨んでいた。


「……同じ場所なのに」


 エリスが、低い声で言う。


「最近、あそこ“楽”って噂」


「俺たちが、手を入れた後だ」


「……なのに」


 結果が、違う。


 リーナが、ぽつりと呟いた。


「……誰かに、聞いた方がいいのかな」


 その言葉に、

 誰もすぐには答えられなかった。


 “聞く”。


 それは、

 自分たちが遅れていると認めることだった。


 レンバートの夜は、静かだった。


 問題が減り、

 騒ぎも少ない。


 だが、水面下では、

 確実に何かが変わっている。


 一人がやっていたことを、

 少しずつ、他の誰かが真似し始めている。


 それは、

 世界が“依存”から抜け出し始めた合図でもあった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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