第25話 同じことをしているはずなのに
同じ頃。
レンバートから少し離れた街道で、
ガルドたちの元パーティは足を止めていた。
「……ここで合ってるな?」
ガルドが地図を見る。
「間違いないわ」
エリスが頷く。
「最近、通行が滞るって報告があった場所」
依頼内容はこうだ。
【街道・通行効率低下】
【原因不明】
「最近流行りのやつだな」
ブラムが鼻で笑う。
「“倒す敵はいないけど、何かおかしい”ってやつ」
「流行り、って……」
リーナが少し不安そうに言う。
「でも、他のパーティも
こういう依頼、普通に片付けてるって」
「そうだ」
ガルドは、自信ありげに言った。
「要は、よく見て、整えればいい」
どこかで聞いたような言葉だった。
現場は、一見すると問題なさそうだった。
道幅もある。
障害物も少ない。
「……何もなくない?」
ブラムが言う。
「いや」
ガルドは、周囲を見渡す。
「“何もない”のが問題だ」
エリスが、少し感心したように言う。
「なるほど。
見通しが良すぎて、逆に速度が落ちる可能性が――」
「だろ?」
ガルドはうなずく。
「じゃあ、少し手を入れる」
彼らは、作業を始めた。
草を刈り、
岩をどかし、
道を均す。
「よし、これで……」
その時だった。
「……あれ?」
リーナが、首をかしげる。
「なんか、歩きにくくなってない?」
「は?」
ブラムが一歩踏み出し、
バランスを崩した。
「うおっ」
「大丈夫!?」
「……大丈夫だが」
足元を見る。
地面が、微妙に柔らかい。
「ここ、踏み固めすぎた?」
エリスが言う。
「水の逃げ場、塞いだかも」
ガルドの眉が、わずかに動いた。
「……一度戻すか?」
「戻すって、どこまで?」
沈黙。
誰も、はっきり答えられない。
結局。
作業は中途半端に終わった。
通れないわけではない。
だが、前より快適かと言われると、微妙。
「……まあ、こんなもんだろ」
ガルドは、そう結論づけた。
「“全部直す”のが正解じゃないって、
どこかで聞いた気がするし」
エリスが、ぽつりと言う。
「……どこで?」
「さあ」
誰も答えなかった。
ギルドに戻る。
受付職員が、報告書を見て首をかしげた。
「……えっと」
「問題は?」
ガルドが聞く。
「いえ。
問題がない、という報告なんですが」
「?」
「“特に変化なし”と書かれてます」
ブラムが、眉をひそめる。
「直したんだけどな」
「それが……」
職員は言葉を選ぶ。
「昨日、別のパーティが通ったそうですが」
「?」
「“少し歩きにくい”と」
沈黙。
ガルドは、無言で報告書を受け取った。
宿への帰り道。
誰も、すぐには口を開かなかった。
やがて、リーナが小さく言う。
「……同じこと、してるはずなのに」
「……ああ」
ブラムが、低く答える。
「うまく、いかないな」
ガルドは、前を見たまま言った。
「方法は、間違っていない」
だが、その声には、
以前ほどの確信がなかった。
“見て、整える”。
同じ言葉を使っても、
結果は、同じにならない。
その理由を、
彼らはまだ理解していなかった。
そして。
理解した時には、
もう簡単には追いつけないところまで、
差は開いている。
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