第24話 真似してみた結果
数日後。
レンバート近郊の森の入口で、
見慣れた顔ぶれが集まっていた。
「……で?」
ミアが腕を組んで言う。
「なんで、私たち呼ばれたの?」
呼び出したのは、若手中心の冒険者パーティだった。
「いや、その……」
代表らしき剣士が、気まずそうに頭をかく。
「“要現地判断”案件を、
自分たちでやってみたんだけど」
「うん」
「判断、合ってるか不安で」
ミアは、アレンを見る。
「……ねえ」
「はい」
「もう完全に“基準”扱いね」
「そうなんですか?」
「そう!」
問題の場所は、森の中の小さな空き地だった。
「ここに、罠があったんだ」
「もう解除はしたんですけど」
「周囲も、整えたつもりです」
若手たちは、どこか誇らしげだった。
アレンは、周囲を一周する。
静かに。
何も言わずに。
「……どうですか?」
剣士が、不安そうに聞く。
「えっと」
アレンは、少し考えてから言った。
「方向は、合ってます」
全員の顔が、明るくなる。
「本当ですか!」
「でも」
一拍置く。
「やりすぎです」
空気が、止まった。
「え?」
「ここ、罠はありました」
アレンは地面を指す。
「でも、通り道じゃない」
「……あ」
「通らない場所を完璧にしても、
意味は薄いです」
ミアは、思わず頷いた。
「なるほど……」
アレンは続ける。
「あと、ここ」
今度は、少し離れた茂み。
「ここは、手を付けなくてよかった」
「でも、危なそうで……」
「危ないから、
人が近づかないんです」
若手たちは、顔を見合わせた。
「……全部直すのが、正解じゃない」
誰かが、ぽつりと呟いた。
「はい」
アレンは、うなずいた。
「“触らない判断”も、判断です」
しばらくして。
簡単な修正だけ行い、
現場は落ち着いた。
「……ありがとうございます」
剣士が、深く頭を下げる。
「自分たち、
“全部やる”ことばかり考えてました」
「最初は、そうなります」
アレンは、穏やかに言った。
「僕も、前はそうでした」
ミアは、ちらっと見る。
(嘘。
あなた、最初から“必要な分だけ”だったでしょ)
だが、突っ込まない。
帰り道。
「……ねえ」
ミアが言う。
「今の、教えたって言わない?」
「そうですか?」
「そうよ」
ミアは、にやりと笑う。
「半歩だけ、
“先生”になった」
「向いてないと思います」
「でしょうね」
ミアは肩をすくめる。
「でも、今日みたいなのは大事」
「なぜですか?」
「あなたがいなくても、
世界が少しだけ回るようになるから」
アレンは、少し考えた。
「……それなら、いいですね」
ミアは、歩きながら言う。
「そのうちね」
「?」
「“教えてください”って人、
増えるわよ」
アレンは、遠くを見る。
「歩く距離、減るといいですね」
「減らないわね」
ミアは即答した。
「でも――」
一拍置く。
「一人で背負わなくてよくなる」
それは、今までになかった変化だった。
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