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追放されたけど、歩いてるだけで世界が楽になるらしい ~追放=失敗だと思ってたら、 一人になった瞬間から成長速度がおかしくなった件~  作者: 蒼井テンマ


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第20話 上の人たちは、静かに困っている

 レンバート冒険者ギルドの奥。


 普段はあまり使われない会議室で、

 数人の職員が机を囲んでいた。


 全員、顔ぶれは穏やかだ。

 声も低い。


 だが、机の上に積まれた書類の量が、

 穏やかではなかった。


「……相談案件、増えすぎじゃないか?」


 支部長が、ゆっくり口を開く。


「はい」


 ハロルドが即答する。


「今月に入ってから、

 “依頼にできない相談”が三倍です」


「三倍……」


「しかも」


 ハロルドは、書類を一枚めくった。


「処理済みのものは、

 ほぼ全て“例の二人”が関わっています」


 沈黙。


 誰も否定しない。


「他支部からも、来ているな」


 支部長が言う。


「はい。

 グラン支部、ローヴェ支部、

 いずれも“現地判断が必要な件”」


「正式依頼には?」


「できません」


 ハロルドは、はっきり言った。


「成果を数値化できないので」


 誰かが、ぽつりと呟く。


「……困るな」


「困りますね」


 全員がうなずいた。


 助かっている。

 だが、管理できない。


 それが一番、扱いづらい。


 その頃。


 当の本人たちは、ギルドの掲示板の前にいた。


「……紙、減ってない?」


 ミアが、じっと見つめる。


「減ってますね」


 アレンも、素直に認める。


「依頼が?」


「依頼になる前に、消えてます」


「……やっぱり」


 ミアは、腕を組んだ。


「ねえ、アレン」


「はい」


「これ以上、何でも引き受けると」


 一拍置く。


「ギルドが、本気で困る」


「それは……」


 アレンは少し考える。


「よくないですね」


「そう!」


 ミアは、思わず声を張った。


「助かるけど、困るのよ!」


「……難しいですね」


「あなたが原因だから!」


 そこへ、支部長がやって来た。


「少し、いいか」


 珍しく、直接だ。


「はい」


 アレンは即答。


 ミアは、内心で身構えた。


(怒られる?

 制限?

 面倒なやつ?)


 だが、支部長の表情は、あくまで穏やかだった。


「結論から言う」


 一拍置く。


「止めるつもりはない」


 ミアは、拍子抜けする。


「……え?」


「ただし」


 支部長は、指を一本立てた。


「条件をつけたい」


「条件?」


「相談案件は、

 “一日一件まで”だ」


 ミアは、思わず息を吐いた。


(よかった……)


 アレンは、首をかしげる。


「それで、足りますか?」


 支部長が、苦笑した。


「足りなくても、

 それ以上は回さない」


「分かりました」


 即答。


 ミアは、横目で見る。


「……あっさり?」


「歩く距離、減ります」


「そこか!」


 支部長は、二人を見て言った。


「これは制限ではない」


「?」


「調整だ」


 ミアは、うなずいた。


「しっくりくる言い方ね」


 会議室に戻った支部長は、

 上部へ送る報告書に一文を加えた。


現地判断型の特殊案件について

当面は“自主対応枠”として運用する


 誰の名前も、書かれていない。


 だが、誰を指しているかは明白だった。


 夕方。


 宿への帰り道で、ミアが言う。


「ねえ」


「はい」


「ついに、上に把握されたわね」


「そうなんですか?」


「うん。

 でも、騒がれなかった」


「それは、よかったです」


 ミアは、少し笑った。


「うん。

 たぶんね」


 一拍置いて、続ける。


「あなたが、騒がせないタイプだから」


 アレンは、空を見上げた。


「普通にしてるだけなんですが」


「それが一番、厄介なのよ」


 こうして。


 アレン・クロウは、

 ギルド上層に“静かに困られている存在”になった。


 称号も、役職も、特別扱いもない。


 ただ、

 世界の調子を少し良くする人として。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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