第2話 歩いてるだけで強くなる
街に入る前に、アレンは一度立ち止まった。
「……一応、確認しとくか」
昨日見たステータスの数値が、少し気になっていた。
丘の影に腰を下ろし、ウィンドウを開く。
表示された数値を見て、思わず瞬きをした。
「……増えてるな」
昨日より、確実に。
筋力も、敏捷も、魔力も。
どれも少しずつだが、全体的に底上げされている。
(戦ったの、あの魔獣一体だけなんだけどな)
首をかしげながらも、アレンはウィンドウを閉じた。
理由は分からない。
だが、問題も感じない。
それなら――気にしない。
そう決めて、街へ向かって歩き出した。
――――――
【スキル《徒歩移動》の熟練度が上昇しました】
――――――
「……あ」
昨日も見た表示。
「歩くだけ、だよな?」
試すように、少し早足になる。
坂を上り、石段を越える。
――――――
【スキル《徒歩移動》の熟練度が上昇しました】
【レベルが上昇しました】
――――――
「……」
アレンは立ち止まり、周囲を見回した。
誰かに見られていないか確認してから、もう一度ウィンドウを開く。
また、数値が上がっている。
「……便利だな」
結論は、やはりそれだった。
街の門をくぐると、昼前で人通りが多かった。
アレンはまず、冒険者ギルドへ向かう。
これは長年の癖だ。
掲示板を眺め、簡単そうな依頼を探す。
「薬草採取……これでいいか」
戦闘のない依頼。
今のアレンには、ちょうどいい。
街の外れで薬草を探し、しゃがみ込む。
土を払い、根を傷つけないように抜く。
――――――
【スキル《採取》の熟練度が上昇しました】
――――――
「……毎回出るな」
もう驚きは薄れてきた。
次々と薬草を集める。
――――――
【スキル《採取》の熟練度が上昇しました】
【レベルが上昇しました】
――――――
「……うん」
なぜか納得してしまう自分がいる。
作業を終え、ギルドに戻る。
受付で報告を済ませ、報酬を受け取る。
「お疲れさまでした」
「どうも」
特別なやり取りはない。
だが、ギルドを出た瞬間。
――――――
【スキル《依頼達成》の熟練度が上昇しました】
――――――
アレンは、さすがに小さく笑った。
「……仕事したら強くなる、か」
悪くない。
午後は街をぶらついた。
宿を探し、装備屋を覗き、食事を取る。
何をしても、表示が出る。
――――――
【スキル《交渉》の熟練度が上昇しました】
【スキル《生活技術》が上昇しました】
――――――
「……」
さすがに、確認せずにはいられなかった。
宿の一室で、再びステータスを開く。
数字は、はっきりと変わっている。
パーティにいた頃。
同じ一日を過ごしても、ここまで上がることはなかった。
(前は……時間、なかったんだな)
討伐、移動、準備。
全部が急ぎ足だった。
今は違う。
一つ一つを、ちゃんとやっている。
「……そりゃ、伸びるか」
原因は分からないが、納得はできた。
アレンはベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。
追放されたはずなのに。
・自由な時間が増えた
・成長も早い
・誰にも文句を言われない
「……やっぱり」
小さく、独り言。
「追放のデメリット、思いつかないな」
窓の外では、街の灯りがともり始めていた。
明日は何をしようか。
そんなことを考えながら、アレンは目を閉じた。
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