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追放されたけど、歩いてるだけで世界が楽になるらしい ~追放=失敗だと思ってたら、 一人になった瞬間から成長速度がおかしくなった件~  作者: 蒼井テンマ


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第1話 成果が見えない雑用係

※ 本作は

・追放されます

・主人公は強くなります

・でもあまり戦いません

・ストレス展開はほぼありません


「追放されたけど、案外気楽だった」

そんなところから始まるお話です。


疲れた日に、

何も考えずに読める成長ファンタジーを目指しています。

合わなければ、そっとブラウザバックしてください。


それでも少しでも

「楽そうだな」と思っていただけたら、

1話だけお付き合いください。

 ダンジョンの最奥で、魔物が崩れ落ちた。


「よし、終わったな!」


 剣を振り下ろしたブラムが、誇らしげに胸を張る。

 ガルドは無言でうなずき、エリスは詠唱を終えた杖を下ろした。


 いつもの光景だ。


 アレンは少し離れた位置で、周囲を見渡す。

 倒れた魔物、壊れていない荷、仲間の怪我の有無。

 地図に印を付け、次の分岐を確認し、水筒を差し出す。


「リーナ、水あるよ」


「ありがとう、アレン」


 それで十分だった。


 ――いや、十分だと思っていた。


 ギルドに戻ると、討伐報告が始まる。


「今回はブラムの一撃が決め手だったな」

「エリスの火力も安定してきた」

「回復も問題なし」


 ガルドが淡々と成果をまとめる。

 数字、討伐数、時間、ランク評価。


 アレンの名前は、どこにも出てこない。


(まあ、いつも通りか)


 地図作成、索敵補助、罠処理、荷物管理。

 それがどれだけ役に立っているか、アレン自身も説明できなかった。


 説明できないものは、評価されない。


 それだけの話だ。


「次の街に着いたら、少し話がある」


 解散前、ガルドがそう言った。


 その声は、いつもより少し硬かった。


 宿の一室。


 全員が揃った状態で、ガルドは口を開いた。


「結論から言う。アレン、お前にはパーティを抜けてもらう」


 一瞬、静かすぎて音が消えたかと思った。


「理由は単純だ。成果が見えない」


 ガルドは感情を交えず続ける。


「戦闘能力、討伐貢献度、ランク上昇速度。

 どれを取っても、今の構成ならお前は数字に出ない」


 ブラムは腕を組んだまま、視線を逸らす。

 エリスは納得したように小さくうなずいた。


 リーナだけが、何か言いたげに口を開きかけて――閉じた。


「……そうですか」


 アレンは、それだけ言った。


 反論は思いつかなかった。

 確かに、戦闘で一番目立つのは前衛と魔法だ。

 自分の仕事は「問題が起きないようにする」こと。


 問題が起きなければ、成果はゼロに見える。


「装備と最低限の食料は持っていけ」


「ありがとうございます」


 アレンは立ち上がり、荷物をまとめた。


 思ったより、心は軽かった。


(急ぐ必要も、無理する必要もなくなるな)


 宿を出ると、夜風が心地よい。


 背後で、誰も引き止めなかった。


 アレンは一人、街道へと歩き出す。


 追放されたはずなのに、

 なぜか胸の奥が、少しだけ静かだった。


 街を離れてしばらく歩くと、周囲はすっかり夜の色に沈んだ。

 街道脇の草原に、アレンは腰を下ろす。


「今日はここでいいか」


 追放された直後だというのに、焦りはなかった。

 むしろ、不思議なくらい頭が冴えている。


 焚き火を起こし、干し肉をかじりながら、これからの予定を考える。

 どの街へ向かうか。

 どの依頼を受けるか。


(……考える時間、前はなかったな)


 パーティにいた頃は、常に先を急いでいた。

 効率よく狩って、最短で戻って、次の依頼へ。


 今は違う。

 誰にも急かされない。


 アレンは荷物を整え、地面に地図を広げた。

 風向き、地形、魔物の痕跡――いつも通り確認する。


 その瞬間だった。


 視界の端に、淡い光が走る。


「……?」


 慣れ親しんだ、半透明のウィンドウ。


――――――

【レベルが上昇しました】

――――――


「……え?」


 思わず声が漏れた。


 確かに、今日は戦っていない。

 歩いて、野営の準備をして、地図を見ただけだ。


「……まあ、疲れてるのかな」


 深く考えず、アレンはウィンドウを閉じた。

 こういう表示は、今までにも見てきた。


 ただ、いつもは討伐の後だけだったはずだ。


 翌朝。


 日が昇る前に目を覚ましたアレンは、軽く体を伸ばす。

 動きが、妙に軽い。


「……気のせい、だよな」


 歩き出す。

 草を踏み、坂を越え、川を渡る。


――――――

【スキル《徒歩移動》の熟練度が上昇しました】

――――――


「……?」


 もう一度、表示。


 アレンは立ち止まった。


「歩いただけで……?」


 試しに、川辺で水を汲む。

 刃物を研ぐ。

 罠を見つけて解除する。


――――――

【スキル《生活技術》が上昇しました】

【レベルが上昇しました】

――――――


 さすがに、首をかしげた。


「……前から、こんなだったっけ?」


 パーティにいた頃は、こんな頻度で表示が出た記憶はない。

 いや、出ていたのかもしれないが、戦闘や移動に追われて気にしていなかっただけか。


「まあ……便利だな」


 結論は、それだけだった。


 昼前、森の手前で魔物の気配を感じる。

 小型の魔獣だ。単独行動。


「避けられるな」


 アレンは進路を変えようとした。

 だが、風向きが変わり、視線が合う。


 仕方なく、短剣を抜いた。


 戦闘は、拍子抜けするほどあっさり終わった。

 一撃で、魔獣は倒れ伏す。


「……あれ?」


 強くなった実感はない。

 なのに、手応えが軽すぎた。


――――――

【レベルが上昇しました】

――――――


 表示を見て、アレンは小さく息を吐く。


「……まあ、いいか」


 深追いはしない。

 素材だけ回収して、その場を離れる。


 日が傾く頃、次の街が見えた。


 丘の上から眺めながら、アレンは腰を下ろす。

 なんとなく、ステータスを開いた。


 数値が、目に入る。


「……ん?」


 一つ二つじゃない。

 全体的に、以前より明らかに上がっている。


 比較対象は、昨日までの自分だ。


「……こんなに?」


 首をかしげながらも、恐怖はなかった。

 理由は分からないが、害はなさそうだ。


 むしろ――


(時間、増えたし。

 成長も早いし)


 追放されたはずなのに、困っていない。


 アレンは空を見上げて、小さく笑った。


「……これ、追放のデメリットあるのかな」


 答えは、まだ出ない。


 だが少なくとも、今のところは。


 悪くない。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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