いってきます
あっという間に月日は流れ、カルロは十四歳になった。
「うえーん、寂しいよぉぉ。」
屋敷の門の前で父さんは子どものように泣いている。一人息子が家を出るのだから寂しいのは当然なのだろうが、こんな泣き方をする親は見たくなかったな。
「荷物は大丈夫?帰りたくなったらいつでも帰って来ていいからね。」
母さんは優しくそう言ってくれた。目元がかなり潤んでいるので、泣くギリギリなのだろう。ちなみに荷物は収納空間魔法でしまってあるためほぼ手ぶらで、魔法をすぐに使えるように杖を上着の内ポケットに入れているくらいだ。
収納空間魔法は某ネコ型ロボットのポケットをイメージしてもらうとわかりやすいだろうか。魔法で空間の出入口を作り、物を中にしまったり取り出したりできる。中がどうなっているのかはわからないが、空間に手を入れると不思議と中に何が入っているかがわかり、取り出したい物をすぐに出すことができる。
「父さん、母さん、今まで何不自由なく育ててくれてありがとう。本当に感謝してます。父さんと母さんの息子になれた俺は幸せ者です。」
元の世界では、病気で両親に手紙でしか感謝を伝えられなかったから、この世界ではこうして言葉で感謝を伝えられて良かった。
「うえーん、ママたちだってカルロのおかげで幸せだったよぉぉ。ママも寂しいよぉぉ。」
限界がきたようで、母さんも子どものように泣きだしてしまった。
「みんなもたくさんお世話してくれてありがとう。」
使用人たちにも感謝を伝える。これだけたくさんの人たちに見送ってもらえるなんて、俺は本当に恵まれている。最後に、ずっと御付きでお世話をしてくれたルークとビショップに近づく。
「みんなのことを頼んだよ。」
そう伝えると二人は、「はい!!」と元気に返事をしてくれた。
「いってきます。」
笑顔でみんなに別れを告げて俺は屋敷を出発した。