邪魔な存在
勉強を進めると、この世界には我々人族が住む人間界と、魔王たち魔族が住む魔界が存在していることがわかった。意外だったのは、この魔界が約九十年前と、わりと最近に出現したものだということだ。それまで魔族はおらず、今は魔界となっている場所にも多くの人々が住んでいたらしいが、魔界の出現とともにみんな死んでしまったようだ。
また、王都では魔界の出現とともに聖剣と呼ばれる剣が現れ、この剣の存在によって王都より西側は魔界の瘴気に包まれずに済んだのではないかと言われている。たしかに世界地図を見ると、王都と魔界は隣接していて、その境目から西側が人間界、東側が魔界となっている。
ちなみに世界地図は、王都と魔界の境目が中心に描かれており、地図の両端、つまり境目の裏側にあたる場所は"死の領域"と書かれている。怖すぎるだろ。いったいここに何があるのかはわからないが、この領域のおかげで魔界の瘴気が西から流れてくることはないようだ。
そして王都では、魔界が現れてから五年ごとに、勇者と呼ばれる者を選定し、魔界の調査や、最近では魔王の討伐などをさせているようだ。もちろん魔王を倒すどころか、初代勇者を除いて魔王と対峙した者すらいない。
だがこの勇者、俺にとってはかなり邪魔な存在だ。俺の目的は魔王を倒すことであるため、誰かに先に倒されては困る。魔王が倒された後に新たな魔王が誕生するシステムなら大丈夫だが、そうでないなら、他の人に魔王が倒された時点で、俺はもう一度別の魔王が存在する異世界に転生することが確定する。さらに、もし魔王が存在する世界がここだけなら、俺は永遠に転生し続けることになってしまうのだ。
俺は絶対に勇者より先に魔王を倒さなければならない。