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三章 ~アネルマ~ (8)

 身体強化魔法・重。俺は身体強化魔法と防御魔法・纏を同時に使うことができる。その際ノートのページの表と裏、両方を使うイメージをしているが、その応用で両方のページに同じ魔法を書くこともできる。

 身体強化魔法・重の場合、当然その効果は二倍になるが、同時に防御力が下がるリスクもある。とはいえ今回の相手にはこっちの方が相性がいい。


 ヤツは吹っ飛ばされ、動かないでいる俺に再び襲いかかる。俺はその攻撃をひらりと躱す。


「もうお前の攻撃は当たらねえよ。」


 俺はヤツの攻撃を次々と躱していく。身体強化魔法・重によって、ヤツの攻撃力とスピードはもはや何の意味も為さなくなった。後は防御力だけ。

 俺は隙をみてヤツの胸を殴る。先ほどとは違いヤツは後ろにふらつくが、そこまでダメージにはなってなさそうだ。まあ多少効果があれば充分だな。俺は攻撃に転じようとするヤツの胸をもう一度殴る。後ろにのけ反るヤツの後方に回り込むと今度は背中を蹴り、前にふらつかせる。そのままヤツの上に飛び、かかと落としをヤツの頭に食らわし、うつ伏せに倒す。俺はヤツの背中に乗り、頭に目掛けて攻撃魔法を放つ。


「攻撃魔法・(こわし)


 放たれた攻撃魔法はヤツの頭を消し飛ばし、地面にはクレーターのような窪みができた。


「嘘だろ。」


「マジで一人で倒しやがった。」


「うはー、予想以上にヤバいね、カルロって、ねえ、フィリフィリ…フィリフィリ?」


「うん、本当、遠いなあ。」




 熊の魔獣を倒した俺は四人のもとに戻る。めっちゃ褒められて、いやいやこれくらい余裕だっつーの。みたいなくだりがあると思っていたが、みんな若干引いてすごいなぐらいしか言ってくれなかった。やり過ぎたか。フィリも少し(うつむ)いて俺と目を合わせようとしない。そんな俺とフィリの様子を見てグレンダが囁いてくる。


「カルロはもう少し女心がわかるようにならないとね。」


 別にわかってないわけじゃない。フィリは俺の隣に立てる人間になりたいのだろう。だが俺から見ればもうすでにフィリは俺と同じレベルと言っても過言じゃない。それだけの才能が彼女にはある。

 現に今俺が使った攻撃魔法・壊を、フィリはフロリスで初めて魔法を使ったときにすでに扱えていた。もちろん俺の補助ありきではあったが。だからそんなに俺との差を気にする必要はないと思うんだが、これが女心がわかっていないということなのだろうか。


「結局カルロ一人で倒しちゃったけど、これで仕事は完了なんでしょ?じゃあさっさと帰ってたんまりお金もらおうぜい!ガララン、ちゃんと用意してあるんでしょうね?」


「当たり前だ。じゃなきゃ貼り出さねえよ。」


 グレンダはもう帰ろうとしているようだが、多分まだ終わりじゃないだろう。


「ブライト、マジでありがとうな。まさか本当にヤツを倒しちまうとは思わなかったぜ。」


 ガランの差し出した右手に握手しようとしたそのとき、突然ガランが手を引っ込め、杖を握る。


「なんで…どうしてまだヤツが生きている!?」


 ガランの言葉に全員が反応する。たしかにあれは熊の魔獣だ。しかし俺が先ほど倒した死体も見えている。つまり


「あれはさっきのヤツとは違う。二匹目だ。」


「はあ?二匹いるなんて聞いてないんですけど。」


「俺だって今知ったわ。」


「まあカルロがいれば大丈夫っしょ。さっきも倒してたし。」


 グレンダ、だけでなくおそらく全員がそう思っているだろうが、正直もう一度ヤツと戦う理由もないし、他にやることもある。


「フィリ、グレンダ、次は二人でヤツと戦ってみてくれ。」


「んあ?うちらでやんの?なんで?」


「二人が現状どれだけ戦えるか見ておきたい。」


「やる!グレちゃんお願い、力を貸して。」


「まっ元々は私一人で倒すつもりだったんだし、それにちゃんと働いてお金をもらった方が嬉しいもんね。」


「それじゃあそっちは二人に任せる。俺とガランはコイツからいろいろ話しを聞かないといけないからな。」


 俺はニックを見る。


「えっ俺からか?いったい何を。」


「お前が作ったんだろ?人工的に、熊の魔獣を。」

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