三章 ~アネルマ~ (2)
俺とフィリは話しを聞くために、警備隊の二人と共に集会所へとやってきた。
「集会所というよりも、酒場じゃないか?ここは。」
「ハハハッ酒はアネルマの特産品だからな。気づいたときにはこうなってた。」
気づいたときにはって、むちゃくちゃだな。集会所は入口の正面に受付があり、左側の広間はおそらく会議室として使われていたのだろうが、今は酒場に改装されているようだ。
「いいのか?ここは警備隊の詰所なんじゃないのか?」
「うちは地域密着型なんだよ。ここの二階にちゃんと詰所はあるし、そこのスペースは元々あまり使ってなくて、もて余してたからな。」
まあそういうことなら納得はできるか。
「それより話しを聞きたいんだろ?そこに座れ。」
俺たちは酒場の空いたテーブル席に座らされる。ガランと青年は俺たちの前に座った。さすがに勤務中だからなのか、酒は頼まず、運ばれてきたお冷やをぐいっと飲み干すと、ガランは話し始めた。
「一週間前、魔獣が畑を荒らしているとの通報があった。そいつは一般的に知られている犬型の魔獣で、そのときは警備隊で対処できたんだが…、この街に魔獣が出るのは珍しいし、群れではなく一匹だけってのも気になったんだよな。そこで俺たちは、警備隊数人で森に調査に入ることにしたんだ。」
たしかに魔獣は群れで、というか魔族に複数匹まとめて管理されているイメージがある。魔界から一匹だけこちら側に迷い混んだ可能性もあるが、この街にたどり着くまで放置されていたことには違和感がある。ガランは続ける。
「翌日、森に入った俺たちは魔獣に気をつけながら進んでいき、そして森の奥でヤツに出会った。」
「それが熊の魔獣。」
「そうだ。なんだ知ってたのか。」
「それを聞いてこの街に来たからな。」
「いや普通聞いたら来ないだろ!何を考えているんだ君たちは!」
ガランの隣に座っていた青年は突然立ち上がって、俺たちを叱責した。よほど俺たちの身を案じてくれているようだが、余計なお世話だ。
「心配無用だ。俺はあなたよりも強いし、通常の魔獣を倒した経験もある。」
青年は何か言いたそうにしていたが、先ほどのこともあってか、何も言わずに座った。
「そうは言っても、ヤツと他の魔獣とじゃあ格が違うぞ。実際森で出会ったときには、警備隊六人がかりでも歯が立たなかった。」
ガランはフーとひと息間をとると、そしてと続けた。
「その翌日、ヤツが街に降りて来たときは百人以上の死傷者が出て、アネルマの西地区は壊滅状態になった。街の人たちの避難はできたが、あの日以来、あそこにはヤツやその他の魔獣たちが頻繁に出入りするようになって、死体の回収すらままならない状態が続いている。」
被害が出たのは五日前か。いつ街の中心まで襲いに来てもおかしくないわけだ。ならこのまま熊の魔獣が街を襲いに来るまで待てば良さそうだな。
「話しを聞かせてくれてありがとうございます。」
話しを切り上げようとする俺から何かを察したのか、ガランは真剣な顔で俺たちを見る。
「お前ら、ヤツに会いに、いや、ヤツと戦いに来たんだろ。興味本位で近づけばただじゃ…」
「ねーえー!お願いだから仕事受けさせてよー、おねーさーん!」
突然ガランの言葉を遮るように、入口の方から甲高い声が聞こえてきた。




