成すべきこと
翌日、俺とフィリは朝から魔導列車に乗り込み、アネルマに向かっていた。目の前に座るフィリは俺の貸した本を読んでいる。俺は窓の外の景色を眺めながら昨日のミーアさんとの会話を思い出す。
「珍しいですね、熊の魔獣なんて。」
魔獣はだいたい犬や猫などの小さ過ぎず、大き過ぎない動物がほとんどだ。というのも魔獣は普通の動物が魔界の瘴気を取り込むことで生まれるため、大きい動物は瘴気を取り込み過ぎてしまい、小さい動物は瘴気が体を回り過ぎてしまう。そのため、そういった動物は魔獣として安定化する前に死んでしまうのだ。
「ああ、アネルマは魔界からも離れているし、そもそもどうやって熊の魔獣が生まれたのかも…あまり考えたくはないな。」
ミーアさんも俺と同じ考えのようだな。
「なるほど、一応頭に入れておきます。」
「まあ君たちくらい強ければ、問題ないかもしれないがな。」
それはそう。ミーアさんには悪いけど、わからないことはなるべく無くしておきたいし、次の目的地はアネルマで決まりだな。
「教えてくれてありがとうございます。」
「…ところで、王都を目指しているのには何か理由があるのか?」
「正確には最終目的地は王都の先の魔界です。俺たち魔王を倒しに行くので。」
「魔王を…」
「まあ子どもの冗談くらいに思ってもらえれば。」
「そんな風には思わないよ。だから大人としては君たちを止めるべきだと思う。でも、そんな権利は私にはないね。」
手放しで信じてくれるとは、それだけ俺たちの強さを認めてくれているのだろう。彼女はバーストの強さをよくわかっているからな。
「君たちを手伝いたい気持ちはあるけど、私では足手まといになりそうだし、応援と…それから心配だけはさせて欲しいな。」
足手まといは、失礼だけどその通りだろう。ミーアさんは強いけど、魔族と渡り合えるほどではない。
「ありがとうございます。その気持ちだけで十分です。この街を守ることが、ミーアさんの成すべきこと…ですもんね。」
「ああ。私はこの街が好きだからな。」
そう言ってミーアさんは微笑む。この人に愛されているこの街が羨ましい。守んなきゃ良かったかもな。いや守ったからこの笑顔が見られたのか。俺は彼女に微笑み返す。
「俺たちは俺たちの、成すべきことを成しに行きます。」




