二章 ~セブクロスト~ (17)
お店に到着すると、店内はすでに賑わっていた。ミーアさんが案内してくれたお店はまさに居酒屋で、仕事終わりと思われる大人たちが酒や食事、会話を楽しんでいる。
「いらっしゃい、ミーアちゃん!席はそこ空けといたから。」
「ありがとうございます。」
どうやらちゃんと予約してくれていたようで、入店してすぐに席に案内される。店主のおじさんは厨房で調理をしていて、配膳はその奥さんが担当しているようだ。
「珍しいね、ミーアちゃんが人を連れてくるなんて。」
お冷やを持ってきてくれた奥さんが、ミーアさんに問いかける。普段は一人で来ているみたいだな。
「彼らには、昨日の騒動のときに助けてもらったんです。だからそのお礼に美味しいご飯をご馳走してあげようと思いまして。」
「あら、そうなの。ありがとうねぇ。おかげで今日も元気に営業できてます。うちの料理は美味しいから、いっぱい食べてってね。」
「いえ、そんな。ありがとうございます。料理楽しみです。」
運ばれてきた料理はどれも絶品だった。この世界に来てからは洋風の料理ばかり食べていたから、久々の和風の料理がとても美味しく、懐かしく感じる。やはり王都に近い街の方が料理のバリエーションも豊富なようだ。
「あの、俺らに遠慮せずお酒頼んでも大丈夫ですよ。」
ミーアさんは俺たちに合わせてソフトドリンクを飲んでいるが、本当はお酒を飲みたいんじゃないだろうか。居酒屋にくるだいたいの客は、お酒を飲みたくてきているようなもんだからな。
「未成年との食事の場でお酒は飲まない。これは私がそうしたくてすることだ。だから気にしなくていい。」
本当好感度上げてくるなぁ、この人は。
「それに君たちの話、ちゃんと聞きたいしね。そもそも二人はなんでこの街に?シンプルにデートしにきただけではないと私は思ってるんだけど。」
「デッ!?」
赤面するフィリはスルーする。
「鋭いですね。女の勘ってヤツですか。」
「女の勘って何?」
しまった。この世界では元の世界のことわざや、特有の表現が通じないんだった。
「すみません、女性は男性よりも直感力が優れている、みたいな意味です。ミーアさんの言う通り、俺たちは今旅をしてて、王都に向かう途中でこの街に寄ったんです。まさか魔族に遭遇するとは思いませんでした。」
「そっか、じゃあ本当にたまたまタイミングよくこの街に来てくれたんだね。改めてありがとう。」
たまたまタイミングよく、そうなんだよな、フィリに出会ったことといいタイミングが良すぎる気はしているんだよな。叶が何か操作してるわけじゃないよな?
「それじゃあこれから二人はまっすぐ王都を目指すの?」
「いえ、バルトハインで闘技大会を見たいと思っているので、一度北に向かう予定です。その途中でどこかの街を経由するつもりなんですが、どの街がいいとかありますか?」
俺はテーブルの空いたスペースに地図を広げる。
「どこもいい街よ。ただ、今行くならこの街は避けた方がいいと思う。」
ミーアさんが指を指したのは、アネルマという街だった。
「この街に何か?」
「最近よく魔獣が目撃されてるんだ。それもただの魔獣だけじゃない。」
「というと?」
「どうやら熊の魔獣によって大きな被害が出ているようだ。」
「熊の…魔獣…。」




