二章 ~セブクロスト~ (11)
戦いが終わり辺りは静かになる。どうやら街の方も騒ぎは収まってきているようだ。俺はバーストの顔にハンカチを被せると、フィリに近づく。
「フィリ、大丈夫か?」
「うん、なんとか…」
フィリは座り込んだまま立ち上がれないでいる。魔法覚えたてであれだけ使ったんだから、疲れて当然だ。俺は彼女の目の前でしゃがみ、目線を合わせる。
「無理させて悪かったな。おかげで魔王軍幹部に勝てたよ。ありがとう。」
「カルロなら勝てるって信じてた。」
そう言って小さく手を上げるフィリとハイタッチする。今回の戦いで彼女の才能が本物であることがわかった。それにこの一戦で彼女は大きく成長した。やはり強い相手との実戦練習(本番になったけど)は有益だな。
そしてこの戦いでもう一つ大きな収穫があった。それは、俺にはすでに魔王軍幹部レベルを一人で倒す力がある、ということだ。まあ実際は二人で勝ったわけだが、今回はあくまでもフィリの練習がメイン。一対一で本気でやり合えば勝てる相手だった。他の幹部や四天王がどれだけ強いかはわからんが、これは一つの指標になる。
まだ旅を始めて二日なのに、強力な仲間を得て、魔王軍幹部の実力も知れるとは、ビギナーズラックかそれとも転生特典なのか、なかなか運のいいスタートになったな。
しばらくして、警備隊のお姉さんが戻ってきた。フィリは疲れて隣で眠ってしまった。
「君たち、無事で良かった。…まさか本当に魔族を倒してしまうなんて、すごいな。ありがとう。君たちのおかげで街を守ることができた。」
彼女は深々と礼をする。
「お姉さんも無事で何より。街はもう大丈夫なのか?」
「ああ、警備隊総出でなんとかなったよ。迅速な対応で被害は最小限で済んだし、負傷者も多く出てはいるけど、今のところ死者は報告されていない。」
死人が出なかったのは不幸中の幸いだな。
「二人は…あまり外傷はなさそうだが、必要なら医者を手配しようか?」
「いや、俺は大丈夫だ。フィリには魔法を使わせすぎたから、どこかで休ませたいとは思ってるんだが…。俺はアイツの死体を処理したいから、フィリのことはお姉さんに任せていいか?」
「そういうことなら、死体の処理は我々に任せて、君も休むといい。」
「あーその、もしアンタらにアイツの死体を預けたら、どういう扱いをされるのかなんとなくは想像つくんだよ。」
魔獣の死体はそこまで珍しいものではないが、魔族の死体は中々手に入るものじゃない。となればバーストの死体は研究や実験の対象として、ひどい扱いを受ける可能性が高い。
「俺はアイツと戦って、アイツのことをたくさん知っていった。その上で、俺はアイツをちゃんと埋葬してやりたいって思ったんだ。だから、俺に任せてくれないか?」
さすがに無理なお願いだとは自分でもわかっているが、それでも俺は男として、どうしてもバーストに感情移入してしまう。
「なるほど…わかった。なら君に任せるよ。」
「えっ!?いいんすか?」
あっさり許しが出て、思わず体育会系の感じが出てしまった。中学、高校と帰宅部だったけど。
「君たちが倒してくれたんだ。君たちに決める権利があるのは当然だ。」
「いやでも、かなり利用価値があるんじゃ…」
「まあ、それはそうだな。でも、ヤツと戦った君はそうはして欲しくないと思ったんだろ?だったら私は君のその気持ちを信じるよ。それにヤツのことは、私以外の警備隊員は見ていないし、なんとかごまかせるだろう。」
なんていい人なんだ。今まで敬語を使ってなかったのが申し訳ないな。
「ありがとうございます。」
「それじゃあ彼女はいったん私の家で休ませるよ。埋葬し終わったらここに来なさい。」
俺は一枚の紙を渡される。そこにはお姉さんの家の場所が書かれていた。簡単に男に住所を教えちゃダメですよ。でもまあ、向こうからしたら男というよりも子どもなんだろうな。
「夜までに報告に行かないとだから、夕方くらいまでに来てくれると助かる。」
「わざわざフィリについててくれるんですか?」
「女の子を一人にはしておけないし、入れ違いになって君を家の前で待たせるわけにもいかないしな。」
まじでいい人だなぁ。美人だし。人生二周目じゃなかったらあっさり惚れてたかもな。
俺はお姉さんにフィリを任せて、見送った。




