二章 ~セブクロスト~ (3)
誰にもバレないように魔界を出発した俺は王都には行かず、王都の南にある村を抜けて南西へと向かって行く。王都でも目的は果たせるだろうが、ジェンが俺のことを部下に監視させてるかもしれないし、何より人が多いため俺が魔族だとバレる可能性が高い。日中はなるべく人の少ない道を通りながら、夜は人目があまりないので魔法で身体を強化して猛スピードで進んで行く。こうして一日かけてセブクロストという街まで辿り着いた。
「なんとかバレずにこれたな。」
魔王軍のヤツらもこれだけ魔界から離れた場所に俺が向かったとは思わないだろう。それにこの街はそこそこ発展しているようだし、俺の目的も果たせるだろう。後はこの街の人間たちに俺が魔族だとバレないように気をつけないとな。
しばらく街を回って、俺は目的の場所を見つけた。しかし緊張や不安からなかなか足を踏み出せない。数分後、俺は一度深呼吸をして、勇気をもって一歩を踏み出す。すると突然声をかけられた。
「あの~、すいません。警備隊のものですが…不審者がいると通報を受けまして、ここで何をしているのか教えてもらってもいいですか?」
しまった!時間をかけすぎた。警備隊だと?クソッここまできてバレてたまるか。
「いや~初めてこの街にきたもので、どの店に行こうか迷っていたんですが、まさか不審者に見えてしまうとは。ご迷惑おかけして申し訳ない。」
「ああ、そうだったんですね。たしかにこの街にはたくさんのお店がありますから迷っちゃいますよね。」
よーし!いける!このまま乗り切るぞ。
「でもそんな風に布で顔を隠されていたら、不審者だと思われても仕方ないですよ。とりあえずその布取ってもらって、一応身分証も見せてもらっていいですか?」
終わったー。もう無理だ。身分証なんてもってるわけないし、布で顔を隠してるのも、顔を見られたら一発で魔族だとバレるからだ。どうする?もう諦めて逃げるか?いや、俺は諦めない。こうなったら無理やりにでも目的を達成させる。覚悟を決め、俺は顔の布を取る。
「ありがとうございま…なっ、あなた、魔族!?」
魔族には人間の見た目をした者と、人間と動物が混ざった見た目をした者がいる。俺は後者で、体は人間だが首から上は狼だ。俺の顔を見た警備隊の女性はすぐに杖を構える。そういえば人間が魔法を使うには道具が必要なんだったな。
「俺と戦う気か?」
「当然だ!私はこの街を守る警備隊の一員だぞ!」
「そうか、なら仕方ないな。」
俺は収納空間魔法を使用し、中から数十匹の魔獣を解き放つ。魔獣たちは街に散開していき、店や人を襲っていく。
「早く街を守りに行った方がいいんじゃないか?」
「くっ、全警備隊員へ、街の至るところで魔獣が暴れています。すぐに市民の避難と救助、魔獣の撃退に向かってください。」
あれは魔道具か。おそらく遠くにいる者と会話ができるのだろう。なかなか便利そうだな。
「あんたは行かないのか?」
「当たり前だ。貴様を野放しにするわけにはいかない。」
「…ならば、やるしかなさそうだな。」
残念だ。彼女のような綺麗な女性を殺さなければいけないなんて。




