キャンセルで
気がつくと俺は教室にいた。
どうやら俺が通っていた高校の教室のようだ。走馬灯?ではなさそうだし、死後の世界的なところだろうか。
俺は教室の後方に立っていて、前方の黒板の前に一人の女子が立っている。黒髪のポニーテールで服装はブレザーにスカート、靴はローファーと、いかにも女子高生といった感じだ。見た目は正直可愛い、当時の同級生たちと比べても一、二を争うぐらいの可愛さだと思う。個人的に。
そこで自分自身も高校の制服を着ていることに気づき、窓を見ると見た目も高校生に戻っていることがわかった。
すると不意に目の前の女子が話し出す。
「ようこそ!えーと、あー名前決めてなかったな、んーと、あれ、なんか死後の世界的なところへ!」
ぐだぐだだな。しかしここが死後の世界的なところというのは合っていたようだ。この娘もそう言ってるし。女子が続けて言う。
「私は神様です。名前は柊叶。よろしくね。」
"吾輩は猫である。名前はまだない。"みたいに言うな。とか、神様にしては名前めっちゃ現代人じゃん。とかツッコミたかったがとりあえずスルーして名乗り返す。
「空井世界です。よろしく。それで神様の柊さんはなぜ俺をここに?というかここ俺が通ってた高校だよな?」
「叶でいいよ。神様だから見た目や場所は自由に変えられるんだ。高校生になってみたかったから、君の記憶から教室と制服を拝借させてもらったよ。」
憧れの女子高生になれた叶は嬉しそうにそう話す。神様でも高校生になってみたいとか思うんだな。
「そして君をここに呼んだ理由はズバリ、君に異世界転生してもらうからです!」
「キャンセルで。」
「早っ!?」