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一章 ~フィリシア・フィリウス~ (7)

 目が覚めると無機質な天井が広がっていた。ここはどこだ?動こうとするがどうやら体が拘束されているようだ。状況がわからないままふと脚の痛みに気づく。そうだ俺はあのガキにやられて…クソッ、じゃあアイツがここに運んだのか。なんとか抜け出さねぇと、杖はどこだ?魔法を使えばこんな拘束すぐにぶっ壊してやるのに。


「探し物はこれかな?」


 スッと視界に入ってきて、眼前で俺の杖をぷらぷら振っているのは、俺を倒した張本人だ。チッ俺はこんなガキに負けたのか。


「おいてめえ!たしか…カルロとかいったか?さっさとこの拘束を()け!ぶっ殺してやる!」


「別に解いてもいいけど、魔法有りでも勝てなかったのに、魔法無しで殺すとか無理ゲーすぎると思うぜ。まあもう少ししたら戻ってくるだろうから、ちょっと待ってろよ。」


 戻ってくる?他に誰かいるのか?コイツは俺をどうするつもりなんだ?するとこの部屋の入口と思われるドアが開かれ、五十から七十歳ぐらいの男が現れた。このくらいのオッサンの年齢って予想つかないんだよな。


「待たせましたな。調べ終わりましたぞ。」  


「そうか助かるよ。で、どうだった?」


「この男の名はプロイド・ガンスモーク。数年前まで王都の防衛班に勤めていたようですが、違反行為をしていたことがバレて辞めさせられたようで。その後はいろんな街を転々としながら、強盗や恐喝、違法な仕事で得た金でギャンブルに明け暮れていたようですな。」


「予想通りのクズだな。そういえばうちの使用人が言ってたな、なんでも助けた市民から金を巻き上げてた人がいて辞めさせられてたとか、コイツのことだったんだな。」


 コイツら俺の過去を調べてたのか。何のためだ?


「それでこの男の借金ですが、この街だけでも複数の組織から金を借りていたようですな。それも当然非合法の。詳しい内訳は聞きますかな?」


「いやいい。それよりどれくらい売れば返せそうなんだ?」


 売るだと?いったい何を…嫌な予感がしてならない。


「売れそうなところを全部売れば届くと思いますよ。」


「じゃあそれで頼む。人を待たせてるから俺はもう行くよ。あとは任せた。」


「ああ待ってください。金融組織のヤツらからまあまあ仲介料を取れそうですが、坊っちゃんの取り分はどうしますか?」


「俺の分はいいよ。そんなクズ売って得た金なんているわけないだろ。」


「ひっひっひっ、でしたら次の取り引きで贔屓(ひいき)させていただきますね。」


「おい待て!何勝手に話を進めてんだ!俺をさっさと解放しろ!」


 クソッ何なんだこの状況は。何でこうなった?どこで間違えた?今頃俺は大金を得ているはずだったのに。全部このガキが、コイツさえいなければ。


「じゃあなプロイド、てめえで作った借金は、てめえの体で返さないとなぁ。」


 ヤツは悪魔のような笑顔でそう言って部屋を出ていった。その笑顔を見てすぐに理解した。この世には他とは違うイカれた強さをもった人間がいる。俺はそちら側の人間だと思っていた。でも違った。アイツはヤバい、戦ってはいけない相手だった。俺は金に目が(くら)んで判断を間違えた。


「それじゃあ、始めましょうか。」


 男は俺の口に布を咥えさせる。これから何をされるかを(さと)り、逃げ出そうとするも、もはやうめき声をだすことしかできない。嫌だ、やめろ、こんな最悪な死に方したくない。


しかしプロイドの意思に関係なくダークネスは彼の身体(からだ)を解体していく。こうしてプロイド・ガンスモークは絶望の中死んでいった。

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