一章 ~フィリシア・フィリウス~ (6)
フィリと別れた俺は街の東側へと向かう。大人を担いでいる子どもは目立つので、先ほどのように建物の屋上に登り、屋根づたいに素早く進んで行く。次第に街の雰囲気が変わってきて、駅前や広場のような長閑さは感じられない場所に着いた。
この辺りはまさに歓楽街で、シンボルともいえる大きなカジノを中心にバーやスナックなどの飲み屋や、水商売のお店、風俗店などが広がっている。どの店もまだ開店には早いようで、ちらほら開店の準備をしている様子が見受けられる。
俺はカジノに行きたい気持ちをぐっとこらえてある路地裏に入った。たしかこの辺だったと思うんだが。
「おやおやこれは、カルロの坊っちゃんじゃないですか。」
「やあ、久しぶりだねダークネス。ちょうど会いに行こうとしてたんだよ。入れ違いにならなくて良かった。」
この男はダークネス。厨二病のような名前でもちろん偽名だが、本名は知らない。年は五十から七十くらいだろうか、このくらいの年齢のオッサンって予想つかないんだよな。頭にはシルクハットをかぶり手にはステッキを握っていてキャラ付けは完璧だ。初めて会ったときからこのスタイルは出来上がっていた。いつからこれでいこうと思ったんだろう。
裏の世界に詳しい知り合いとは彼のことだ。八歳の時、本や資料だけでは魔界や魔族について調べるのに限界があると感じた俺は、グレーな方法で情報を得るしかないと思い、いろいろ行動するうちに彼と出会った。屋敷を出る数日前に彼がこの街に来てることを耳にしていたので、もともと挨拶しにいこうとは思っていたのだが、まさかの収穫があったな。
「私に用というのはその男のことですかい?」
「ああ、詳しいことはアンタの拠点に着いてからにするよ。」
路地裏を抜けると物静かな寂れた道に出た。俺はダークネスに先導してもらい少し歩いた先にある狭い階段を下っていく。階段を下ると扉があり、中に入ると開けた空間が広がっていた。ここがこの街での彼の拠点なのだろう。ここはいかにも違法そうな薬品類が置いてあったり、檻の中には魔獣がいたりとまさに裏の世界といった場所だ。
「それで、坊っちゃんはその男をどうしようと?」
「ダークネスはたしか臓器売買もやってたよな?コイツをバラしてたくさん買ってもらいたいんだ。」
「たくさん…というと死んでしまうかもしれませんが?」
ダークネスはひっひっひっと笑いながら聞いてきた。笑い方までキャラ付けが完璧だ。
「構わないよ。コイツはどうせ死んでもいい人間だろうから。」
そう言うと俺は奥の部屋に案内された。そこは病院の手術室のようなところで、中央にある手術台にプロイドを寝かせると、ダークネスはプロイドを台に拘束した。
「それじゃあ、何を売るか詳しく詰めていきましょうか。」




