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何も成さずに死んだ人
フリーターとは十五歳から三十四歳までの非正規雇用者と定義されている。つまりは学校にも行かず定職にも就かず、アルバイトやパートの仕事で生活している人のことだ。ちなみに同年齢で無職の人はニートと定義される。
俺、空井世界は大学卒業後、特に夢や目標もなかったためフリーターを選択した。友人など周囲の人達からはもったいないと言われたが、俺はこの選択を後悔したことは一度もない。友人と遊んだり、彼女とデートしたり、両親と旅行したり、アルバイトだけの稼ぎでも、十分充実した生活を送っていた。
しかし、三十歳を越えてから体の不調を感じ、三十四歳で入院、そして一ヶ月後に三十五歳の誕生日を控えた今日、俺は自らの死を悟った。
独身のフリーターである俺の人生を他人が評価したら、きっと低評価を付けられるだろう。それでも俺は俺の人生に満足している。自分で選んだ道を進み、豊かな人間関係を築き、両親に恵まれた。悔いのない幸せな人生だったと胸を張って言える。
こうして空井世界は、フリーターでもニートでもない何者かになる前に死んだ。