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第9話 モブと救世主

 嫌な予感が的中した。


 現在昼過ぎ、数学の授業中だ。

 五分ほど前からお腹が痛い。 どうやら今朝の肉でお腹を壊してしまったようだ。

 やれ朱莉め……。


 とりあえず今はトイレに直行したいところだが、それは最難関ミッションだった。

 なぜなら数学の担当教師は、担任である茨祐靡いばらゆうびだからだ。


 これの何がいけないかって祐靡に授業を休みたいと言うと、殺意に満ちた目で睨まれるからだ。

 普段からハスキーボイス&目つきの悪さで生徒から恐れられている。 そこへ睨んだ目が追加されると、もうそれは鬼だ。


 どうしたことか。 俺は視線で殺されるか、みんなの前で漏らして死ぬかを選ばないといけないということか……。 どちらにせよ地獄だ。


「近衛くん、顔色悪いけれど大丈夫?」


「大丈夫、と言いたいところだが全然大丈夫じゃない。 腹痛で死ぬ」


「あ、あはは……。 腹痛は地獄だよね、私に任せて」


「え?」


 琉生の反応を待つ前に、唯は手をピシッと挙げた。


「伊織、どうかしたか?」


「はい、先生。 近衛さんがトイレに行きたいそうです。 行ってもいいですよね?」


 クラスメイトとはほとんど話すことのない唯であるが、何故か祐靡とはよく話す。 そのおかげか、唯はハキハキと話した。


「はぁ……。 近衛、そういうのは自分で言え。 わかったトイレに行ってきてもいいぞ」


「あ、ありがとうございます」


 少し視線を集めてしまったが、モブと呼ばれているおかげか、すぐに視線を外してもらえた。

 琉生はすぐさま席を立ち、教室から出てトイレへ向かう。


 祐靡ちゃん、予想外の対応でびっくりしたな。


 ちなみに祐靡は生徒から祐靡ちゃんと呼ばれている。 本人の前で言うとキレるが、陰でこっそり嬉しそうにしているのを誰かが目撃したことによってそう呼ばれ続けているのだ。


 トイレで数分間腹痛と戦ったら幾分かはマシになった。 あまり長引くと祐靡から睨まれそうなので、琉生は手を洗い教室に向かった。


 廊下の窓から外へ視線を向けると、一組と二組が合同体育をしていた。

 どうやら男子はグラウンドでサッカー、女子はテニスコートでテニスをしているようだ。


 テニスコートには初めてしたのか、アマチュアの人がたくさんいた。 そんな中一際目立ったプロ並みのプレーをしている女子がいた。


「あれ、朱莉じゃねぇかよ」


 その女子とは朱莉のことだったのだ。 朱莉は中学で三年間続けてきたテニス部に所属している。

 元々運動神経がいいこともあり、一年生だが上級生といい勝負をしているらしい。


「俺の腹を壊したのは朱莉なのに、当の本人は楽しく得意なテニスで無双中ですか」


 琉生は「はぁ……」とため息をつき、朱莉が今日帰ってきたらお仕置でもしてやろうかと思った。


 教室へ戻ると祐靡から少し睨まれたがあまり怖くはなかった。


 席に着いて隣の席へ少し顔を傾けると、唯が私に任せとけ、と言わんばかりに胸を叩きドヤ顔を決める。

 琉生は内心「可愛いな、おい」と思いながら、両手を合わせて感謝の意を伝えた。


 お互いに祐靡に怒られたくないので、すぐに授業に意識を移す。


 話さないと決めたはずなのに今日、琉生は少し唯と話してしまった。 しかし無理に話さないようにする必要はないのかもしれない、と思った。


 ★★★


『今日の放課後予定空いていたら、遊びに行かないか?』


 数学の授業の終了した後すぐに琉生からメッセージが届いた。

 同じクラスにはよく話す友人がいない唯は、休み時間は復習やスマホを見ることで時間を潰している。


 やった、近衛くんから遊びに誘ってくれるなんて嬉しすぎる! でもあと少しで期末テストだ。

 私には何としてでも五位以内をとらないといけない。


 唯は遊びたいという欲に負けそうになるが、目の前にある現実から逃げないようにする。


『ごめん。 期末テストが近いから遊べない……。 私何としてでも五位以内をとりたいの』


 唯は隣の席に座る琉生の顔を覗くと、少し難しそうな表情をしてからすぐに、閃いた!というように顔を輝かせた。


『そういうことなら今日家誰もいないから、一緒に勉強会する?』


 い、家……!? しかも誰もいないって?

 そんなの何か起きるかもしれないじゃない!

 でも……、近衛くんは私よりも頭がいいから、分からないところを教えてくれそう。 よし、決めた。


『する。 ちょうど今日の数学少し分からないところがあったから教えて』


『もちろん。 任せとけ』


 近衛くん途中トイレに行ってたけれどわかるのかな、という疑問は一切なく、唯は勉強会が出来ることを喜んでいた。


 それからは時間が一瞬のように感じ、気がついた頃にはHRが終わっていた。


 勉強会が楽しみではあるが、いざもう少しで勉強会が始まる、と思うと胸の鼓動が早くなるのがわかる。

 そして家に誰もいない、ということを思い出すだけで顔が熱くなった。

 唯は琉生と友達であるが、異性の友達だ。 異性と同じ部屋に二人きりなんて少し意識してしまうに決まっている。


 勉強に集中できるかなと少し心配しつつも、メッセージアプリで伝えられた琉生の住むマンションまで、スキップを交えて向かう唯であった。

祐靡ちゃんこと茨祐靡先生の、「靡」という字は本来名前に使えない漢字らしいです。

でもでもこれはフィクションなので、使います!(笑)



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