第32話 冷姫とパジャマパーティー
「ふんふんふ〜んっ」
語尾に♪がついてしまいそうなくらい、上機嫌な朱莉は浴室に消えていった。
そしてリビングは静かになる。二人になると、伊織宅で泣いていたことを思い出した、お互いに気まづくなる。
「──唯さん」
静寂な時間に終止符を打ったのは琉生だった。
俯いていた、朱色に染った顔を上げる。
「……」
一言声を発したが、何を言おうか考えていなかった。──よって必死に考える羽目になる。
「──ふふふ、もう元気だよ。琉生くんのおかげ、改めてありがとね」
唯がくすくすと笑いながら言った。
琉生は愉快そうに笑う姿を見て、ホッとする。
泣き疲れて目は赤く腫れてはいるものの、花火大会の時の笑顔を見ることが出来て嬉しく思う。
これで思い悩んで寝れない、ということは無さそうだ。
◆
「みんなのアイドル、あかりん参上!」
理由は知らないが、いきなり泊まると言った親友の目が、涙で赤く腫れていることに焦りを覚えた朱莉は、テンション百二十パーセントで浴室から出てくる。
しかし完全に吹っ切れた親友を見て、恥ずかしくなる。
「朱莉、恥ずかしいから人前でそういう事をするのはやめてくれ。……いや、人前じゃなくてもやめてくれ」
「は、はい……」
見ていた俺までも恥ずかしくなり、つい言ってしまった。
唯さんは開いた口が閉じなくなっている。
可愛いが、その原因は朱莉にあるのでなんとも言えない気持ちになった。
「取り乱して申し訳ないでござる。もうやめるでござる。──今日はパジャマパーティでござる、夜遅くまで楽しもう〜!!」
謎の『ござる』はすぐに無くなる。
その語尾に飽きたのか、嬉しさのあまり忘れたのか、誰にも分からない。
「よっしゃみんなでホラー映画見るぞぉ〜!」
「いいねー」
「ひぃ……」
朱莉の魂の提案に、琉生は首を縦に振る。
唯はと言うと、顔を青くして必死に首を横に振っているが、テレビについているサブスクで面白そうな作品を探す二人は気づかない。
「お、これいいじゃん!」
「そういえばベビーカステラ買ってきたんだった。ポップコーンの代わりに食べるか」
「……」
「私コーラ注いでくる!」
「頼む」
「……」
完全に置物と化した唯は、慌ただしく部屋を動き回る二人を眺めるので精一杯だった。
◆
大きなテレビの前に置かれた、大きなソファー。三人は、左から朱莉、唯、琉生の順で仲良く並んでいる。
映画は廃村を男女四人で探検するという、『恋愛×ホラー』の作品だ。
恋愛系の作品を好む唯は、話の内容が気になりテレビに釘付けとなっている。(ホラー要素はまだ出てきていないので油断している)
『グルゥアァァァア』
「いやっ……!」
突然のホラー要素に、唯は思わず肩を跳ねさせ、隣にいる朱莉に僻みつく。
その姿に、琉生はついつい頬を綻ばせる。
琉生や朱莉としては、ホラー要素よりも恋愛が強調されているこの作品に飽きてきたようで、少し暇そうにしている。
しかし朱莉の表情は、つまらなさそうな表情から、一瞬にして楽しそうな表情に変わる。その理由は──
「うわっ!」
「ひゃっっ!!」
「唯ちゃん驚きすぎ!」
ビビりな唯を驚かすと面白いのでは、と思いついたからだ。
案の定驚いた唯は、朱莉と反対側の琉生にしがみつく。
モコモコとした素材ではあるが、先程までの浴衣とは違い、すぐそこに肌があるように感じられる。
これがパジャマパーティの恐ろしさだと琉生は確信する。
その後座った状態ではあるが、腰を抜かした唯は身動きが取れなくなり、二人は「ラブラブだね〜!」と朱莉にいじられるのだった。
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