運の良いやつ悪いやつ
賃貸しマンションの前の道で近所のババア共がお喋りしてるらしく、声高にさえずる声が聞こえて来る。
「ねぇ聞いた? 角のゴミ屋敷の偏屈爺さんの遺体が、川の土手の下で見つかったらしいわよ」
「え? ホントに?」
「ホント、ホント。
夏の間生い茂っていた土手の草を刈り取っていた、市から委託されて刈り取り作業を行っていた作業員が見つけたんだって」
「へー」
「それでね、家の息子の友達が警察官なんだけど、その子が言うには死後2カ月だったらしいのよ」
「言われてみれば、此処最近あの偏屈爺さんの姿見かけなかったわね」
「警察の見立てでは、土手の上の遊歩道を歩いている途中に、心筋梗塞を起こして土手の下に転がり落ちて亡くなったらしいは」
「そうなんだ。
でも偏屈爺さんが亡くなったって事は、あのゴミ屋敷のゴミも撤去されるって事だから、良かったとも言えるんじゃ無いかしら」
「あ、それもそうね」
「「アハハハハハ」」
俺はマンションの借りてる部屋に置かれているベッドに横たわり、羨ましく思っていた。
たった2カ月で見つけてもらえるなんて、なんて運が良いやつなんだと。
俺なんて、死んでから1年以上経つのに未だに見つけてもらえないんだからな。
やっぱり家賃や光熱費を口座からの引き落としにしていたのが間違いだったんだろう、口座に金が残っている限り管理会社の奴等を含めて誰も訪ねて来ないだろうからなぁー。