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Niedlich ist gut

 放課後の教室。大半の生徒は帰宅するか、部活動へと行ってしまった。そんな中で3人の中学生が話をしている。


「さなっちは今日はナチュラルメイクなんだね」


 ほっぺたがふわっとした愛らしいピンク、くちびると目にもピンクという、可愛らしいメイクをばっちりほどこした女の子が笑顔で話している。


「雑誌で学校にふさわしいナチュラルメイクってあったから、やってみたの」


 話しかけられた女の子は笑顔で返事をする。その女の子は薄く色をついたメイクをしているためか、ノーメイクっぽい。でも実は自然な赤さを足してくれるリップや目立たない色のマスカラ、チークを淡く塗っているのでノーメイクではない。


「2人とも中学生には見えないくらい。メイクしているから大人っぽい」


 ノーメイクでかっこいい子が2人を見て、呆れたような顔をしている。


 ピンクのメイクをばっちりした子が星本月杏(ほしもと るあん)で、チュラルメイクの子が梶井小那愛(かじい さなあ)で、ノーメイクでかっこいい子が三島夏保(みしま かほ)で、3人は友達だ。それもあってか放課後に教室で話している。


「えーかほっち。女の子はかわいい格好をするのが一番。たしかにかほっちはかっこいい系が似合うけど、かわいいファッションも似合うよ」


 話しながら月杏はある雑誌を取り出して、夏保に見せる。


「こんな長いスカートとか似合いそう」


 小那愛も月杏の意見に賛同して、雑誌のあるページを指さす。


 そこにうつっている女の子は灰色のニットに白色のロングスカートを合わせるという、シンプルで可愛い格好をしている。確かにピンクでフリフリ、甘くてかわいいという感じではないので、これならかっこいい系の夏保でも似合うかもしれない。


「別にかわいい服が着たいわけじゃない。服なんてTシャツとシンプルなパンツ、ジャージがいいんだって」


 夏保は2人の意見をばっさり否定する。


 夏保は2人と違ってかわいい服を無邪気に着ることはできない。なんなら昔からかわいい格好をするのを強制されてきたこともあって、一種のトラウマである。


「えーじゃあこの黒いスカートとかどう? 黒のトップスに黒いスカートを合わせているよ」


「あっ黒だからかわいいだけじゃなくて、かっこよさもあっていい」


 月杏が指さした服を小那愛はほめる。


 黒のトップスと黒のスカートは2人の言うとおり、かわいさだけではない。そこでこういう格好なら夏保もしたくなる、そう2人は考えたみたい。


「黒でかっこいいというよりもかわいいという感じが強いからいいかな」


 夏保はあっさりと否定する。


「じゃあこういう風なピンクのパンツはどう?」


「スカートじゃないから、かっこいいかも」


「リボンがついているし、色がかわいらしいからいいや」


 月杏と小那愛が薦める服をためらいもなく否定する夏保。それほど夏保はかわいい服を着るのが嫌なみたいだ。


「ていうか月杏、雑誌の表紙になっているなんてすごいね」


 これ以上服を薦められたくない月杏は話を変える。


 月杏は中学生向け雑誌のモデルをしている。しかも月杏はかわいくてファッションセンスもあるため、毎号雑誌に登場している。そこで3人が今見ている雑誌にも月杏の写真が良く出ていて、表紙にも採用されている。


「そうかな? 自分らしいファッションがどういうのか分からなくて苦労したから、こうやって色々と雑誌に載るようになったのはつい最近なんだ」


 少し謙遜しつつも、うれしそうに話す月杏。


 月杏がモデルをしている雑誌は中学生向けなこともあって、色々な世代の人が見ているわけではない。そこでどちらかというとマイナーな雑誌かもしれないが、そこでモデル活動をしっかりとできていることは月杏のほこりとなっている。


「そうそう。私もるあちゃんすごいなって思う。私はこういう風に服をきこなすことは無理だもん」


 小那愛が羨ましそうに話す。 


 小那愛はとてもかわいらしい。身長は163㎝と少し高めかもしれないけど、それを補うほどの愛らしさがある。そこでうまくいきそうだけど、小那愛はモデルをする気はない。それもあってか雑誌に自分のコーデを送ることもしないし、そもそも自撮りもしない。


「えーさなっちはかわいいから絶対モデル向いているよ。かほっちだってかわいくしたらいいと思う、似合うから」


 月杏はさらりと反論する。しかも夏保の望んでいない、かわいくするべきって話に戻ってしまった。


「たしかにかわいくするのは良いよね。絶対かほちゃんもかわいくするべきだよ」


 小那愛も月杏に同意する。


 世の中色々な意見があるけど、月杏と小那愛は女の子がかわいくするべきだっていう固定概念に縛られている。


「ていうか4時だけど。小那愛もうそろそろ帰らなくて大丈夫?」


 かわいくすべきだって話にうんざりしてきたのか、夏保は時計を見て全く違う話をする。


「そうだね。もう帰る。今日は『リュビ』でお手伝いもしたいし」


 小那愛は慌てたように片付けをはじめる。


 小那愛がお手伝いをしている『リュビ』は月杏の親が経営しているケーキ屋。月杏がモデル活動などで忙しくしていることもあって、小那愛が月杏のかわりにお手伝いをしている。


「お店のお手伝いをしてくれるの? ありがと。じゃあ帰るか」


 月杏も小那愛同様に帰る準備を始める。


「ケーキ屋のお手伝いをがんばっているけど、小那愛はケーキ屋に将来なりたいの?」


 夏保が素直に聞く。


 おしゃれに興味はあるけどケーキ作りにはまっているわけでもない小那愛がケーキ屋のお手伝いをがんばっているのは、あまり理解されないことかもしれない。


「うーんわからない。でもケーキは好きだから」


 小那愛はあいまいに答えて、帰る準備をひたすらする。


 ちなみに3人とも恋人や好きな人はまだいない。そこで3人とも恋のためにお洒落をするという発想は、今はないのだった。

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