Ich will nicht auf Wiedersehen sagen
失恋した後も、人生は続いていく。
そこで小那愛が秋央に振られたとしても、人生は終わらない。小那愛は秋央に振られる前と同じような生活をしている。
「小那愛の引っ越しと」
「るあちゃんの外部の高校進学と」
「かほっちの高等部に進むこと」
「「「おめでとう」」」
夏保、小那愛、月杏の3人で修了式が終わった後に『リュビ』でパーティーをする。
「これ最近韓国で話題になっているっていう、リボンが特徴的なリボンケーキ」
「こっちのデコってあるのは?」
「そっちはわたしが作った。中学最後だし、はりきってみた」
白いショートケーキにピンクのリボン、そしてカラフルなチョコスプレーとアラザンがちりばめられたケーキ。
そのお菓子を食べながら小那愛、夏保、月杏の3人で話す。ケーキは月杏が用意しただけもあって、インスタ映えしそうな見た目だ。
「このケーキ美味しい」
「本当だ。甘すぎない」
見た目重視だけではなく味も美味しいケーキに、小那愛と夏保は喜んで食べている。
「かほっちは春からもバスケを続けるの?」
「そう。中等部お世話になった先輩方と一緒にまたバスケができるのがうれしい。月杏は高校でメイクの勉強をするんだよね」
「そうそう。カジュアルからガーリーまで今までメイクしてきたけど、本格的な勉強はしてなかったから。雑誌のモデルも最高学年になるし、今までよりももっと頑張りたい」
夏保は高等部に進むし、月杏は自分の将来のために外部の高校進学することを決めた。
でも小那愛はそうじゃない。親に決められて引っ越しして転校することになった。
そこで自分の思い通りに生きることができる、小那愛は月杏と夏保がうらやましい。
「あっもうそろそろ時間だから帰るね」
そういうわけで小那愛は2種類のケーキを少しずつ食べると、帰宅することにした。
小那愛はケーキが好きなので、本当はもっと食べたい。でも思い通りの人生を生きている夏保や月杏の2人と一緒に過ごす楽しさが、理想通りに生きることができない自分の人生にもやってしまう感情に勝てないので仕方ない。今の精神状態じゃあ、ケーキを楽しむことはできない。
「ただいま」
「早く引っ越しの準備をしなさい」
もやもやしている小那愛に対して、母親は注意する。
そう今から小那愛は引っ越しするのだ。夏保や月杏とパーティーを楽しむために、部屋の片付けは終わっている。そこで今小那愛がすることはない。
とりあえず大きめの白いフーディと淡いピンクのロングスカートから、おしゃれなスウェットの上下に着替える。そしてうっすらほどこしたメイクを落として、無色の日焼け止めと透明なリップを塗る。
それによってメイクがかわいい女の子からユニセックス風な女の期に小那愛は見た目が変わる。でも小那愛のかわいさは変わらない。
「小那愛、行くわよ」
「はーい」
荷物をトラックに積むなど、引っ越しを本格的に始める小那愛。
そして全ての荷物がなくなった後、小那愛は手荷物を持って車に乗り込む。
「じゃあ出発するぞ」
いつもよりもうきうきしている父親の声を聞きながら、小那愛はスマートフォンをいじる。
「雪木市についたぞ」
という言葉を聞いたのは、小那愛が新しいコスメのショート動画を見ているときだ。
「小那愛がこれから通うことになる銀花女子高校だ」
「おしゃれそうな高校だわ。よかったわね、小那愛」
父親と母親にうながされて、小那愛も窓の外を見る。そこには小那愛が通っていた心愛学園よりもぼろい学校があった。
「制服はかわいらしいジャンパースカートらしいし、よかったわね」
雑誌やSNSでジャンパースカートの制服をかわいく着こなしている人はいない。そのうえスカート丈を短くもできないので、制服は心愛学園の方が小那愛は好きだ。
でもそんなこと言ったって無駄だって、小那愛は知っているので黙る。
「素敵な街だろう。この街で暮らすことが夢だったんだ」
「そうだわね。この街での生活にわくわくしてきちゃう」
父親と母親はここでの新生活に夢を見ているらしく、楽しそうだ。
それに対して、小那愛はどんよりとしている。
月杏や夏保という友達と離れて、今まで頑張っていた『リュビ』でのお手伝いもしなくなり、何よりも今まで一生懸命頑張っていたメイクだって登校するときはできなくなる。
これまでの生活とはがらりと変わり、失うことが多い。それなのに失った分を補うことができるような、新しい物を手に入れられるかどうかは不安だ。
「東京と違って高いビルは少ないのね」
「そこがいいんだ。どこにでもある地方都市のようで、そうではないところがな」
楽しそうに母親と父親が話し続けるのを聞きながら、小那愛がまた違う動画を見始める。
これからの生活について考えないようにしながら、小那愛が現実逃避に動画を見る。それはもうこの先幸せになんてなれないから、仕方ない。




