Jemandem beichten, den man liebt
「どの日焼け止めがいいのかな?」
放課後の教室で小那愛と月杏、それから夏保の3人で雑誌を見ながら話している。
今日はバスケットボール部の活動が遅め。それこでバスケットボール部の部員である夏保や部員の秋央を追っかけている小那愛も月杏と話している。
「私はこのトーンアップの日焼け止め。ラベンダーピンクでキラキラするから、かわいい」
小那愛はうきうきとかわいらしいパッケージの日焼け止めの写真を指さす。
「じゃあわたしはクリアベージュの日焼け止め。化粧下地のかわりになりそう」
月杏は少し考えて、小那愛とは違う日焼け止めを指さす。
「私はこれ。水っぽい感じがよさそう」
夏保は他の2人とは違う日焼け止めがいいみたい。
「日焼け止めって大事だよね。私はベージュ系の日焼け止めに、イエローのアイシャドウをあわせて明るい感じにしているの」
「私は日焼け止め、リップ、アイシャドウ、チークを今日は全部ピンク系にしてみた。パウダーは透明だから、ピンク強めなんだ」
月杏と小那愛の2人がメイクでワイワイ騒いでいるのを、夏保は黙ってみている。夏保はメイクに興味が無いので、こうやって見守ること以外はできない。
「そうだ、今からバスケットボール部の集まりがあるから。ごめん、さようなら」
夏保はスマートフォンを見てから、メイクの話をしている月杏と小那愛の2人から離れる。
そして夏保がいなくなったのを見てから、小那愛は口を開いた。
「そうだ、実は私、バスケットボール部の波野くんのことが好きになっちゃったんだ。転校もすることになるけど、告白していいかな?」
自信のあまりなさそうな声で、ぽつりと小那愛は話す。
「大丈夫だよ。小那愛はモデルに負けないほどかわいいから、告白したらどんな男だってOKしてくれるよ」
月杏は自信満々に答える。
「そうかな?」
小那愛は不安でいっぱいだ。
確かにメイクを頑張っているから、小那愛はかわいい。でも小那愛よりもかわいい人はいっぱいいるから、それだけで告白が成功するとは思えない。
「じゃあこのリップクリームを塗ればいいよ。今日のかわいいピンクのメイクにあうし、何よりもアクセントになるよ」
と月杏はあるリップクリームの容器を取り出す。そのリップクリームの容器はキラキラとしていて、高そう。
「これブランド品じゃない。使ってもいいの?」
「いいよ。これ後輩が愛用しているらしく、雑誌の人からもらったんだ。でもわたしはこれ使わないし、よかったらもらって」
「ありがとう。じゃあ今から告白する」
小那愛はうきうきとリップクリームを持って、お手洗いへ行く。
そこでリップクリームをくちびるにぬる。さっきまでのピンクとは違う、強い赤。それを見るだけで、恋がうまくいくような気が小那愛はした。
そう小那愛はかわいい。だれが見てもそう表現する。
卵のような丸めの顔、陶器のような汚れのない白い肌に、ぱっちりとした目。そのうえメイクをして、つやつやとした黒い髪なのだから、モテないはずがない。実は今まで知らない男子から告白されることもあったので、小那愛は告白にはなれている。
それで告白だってうまくいくはず。むしろうまくいかないはずがない。
「三島先輩、もうすぐ卒業なんてさびしいです」
「高校生になるから仕方ないよ」
「来年後輩が入ってくるかも心配です」
「むしろいっぱい入ってくるかもよ。今なら1年生でも全員試合に出ることができるから」
「そうだといいです」
体育館から夏保と陽里花の2人がわいわい話しながら、歩いて行く。
ということは今体育館には秋央しかいないのでは? 秋央は練習熱心なので、それはありえる。
「あっ」
秋央は体育館にいた。それを小那愛はじっと見る。
秋央はゴールにボールをいれる。何度も何度も、あきらめずにボールをいれ続ける。
「波野くーん、帰らないの?」
大きな声で、小那愛は話しかけてみる。
「もう少し練習したら帰る」
秋央は小那愛の方を見ないで、ひたすらボールをゴールにいれる。
そこで秋央がバスケットボールの練習を終わるまで、小那愛は体育館から離れることができなかった。
「あれっ梶井さん帰らなかったの?」
バスケットボールの練習が終わった秋央は、体育館でいる小那愛を見て目を丸くする。
「今から帰るよ。ところで波野くんは今付き合っている人はいるの?」
「いないよ」
「じゃあ私と付き合って下さい」
うまい言葉ではないかもしれない。
それでも小那愛は秋央に告白することができた。転校することを回避できないからここでしないと一生告白できない。その気持ちがあって、言えたかもしれないけど。
「ごめん、俺好きな人がいるんだ。だから梶井さんとは付き合えない」
秋央はそう言って、足早に立ち去る。
後には小那愛だけが取り残された。
そうかわいいだけでは、小那愛は秋央と付き合えなかったのだ。




