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たけや屋の短編〜中編はここ。

ムーンショット計画——最近話題のコオロギ食、その根源のプロジェクト

作者: たけや屋

 前回書いた、コオロギ食についてのエッセイが予想外に読まれているようで驚いています。

 自分は基本的にコオロギ食についてはノーを突きつけます。安全面の問題もありますが、今まで日本人が食ってこなかったモノに対する不信感もあるからです。


 なぜ最近ここまでコオロギを食え食えとマスコミが推してくるのか? 他にも研究が進んでいる分野はいくらでもあるのに。


 その根源は内閣府。

 自分は前回のエッセイで内閣府の資料を引用しました。

 同じく内閣府の計画で、コオロギ食に関わるものに以下のようなものがあります。


 それはムーンショット型研究開発制度。


 ◆ ◆ ◆


【ムーンショット型研究開発制度は、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する国の大型研究プログラムです】

(内閣府資料より引用)


 このムーンショット制度には全部で9つの目標があります。

 その中の目標5が、


『2050年までに、

 未利用の生物機能等のフル活用により、

 地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出』

 というものです。

 さらにこの目標5はプロジェクトが8つに分かれてまして、その中のひとつが、


『食品ロスゼロを目指す食料消費システム:

 地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料生産システムの開発』

 です。


 そしてさらにそれは6つのサブプロジェクトに分かれていて、その中のひとつが最近話題の、

『サブプロジェクト4:コオロギ由来食料開発』

 となります。


 つまりコオロギ食っていうのは、

 大きな研究開発制度の9分の1の、

 その中の8分の1の

 さらに6分の1でしかないのです。


 このサブプロジェクトの中には

『昆虫ゲノム育種』

『環境保全型昆虫生産システム開発』

『昆虫由来水産・畜産飼料開発』

 などもあります。


 つまり人間が直接コオロギを食べることがメインではないのです(中の人がどう考えているかはわかりませんが)。


 なので自分は前回のエッセイのタイトルを、

『コオロギ食に断固としてノーを突きつける』

 という強い調子のものにしたのです。


 たくさんの選択肢がある中で、いちいち人間が直接コオロギを食わんでもいいじゃないか——と思ったから。

 食にうるさい日本人が今まで食べてこなかったコオロギには、非常な忌避感があったから。

 人類の歴史上、昆虫を主菜副菜にしてきた民族は存在しないという歴史に学び、抵抗感があったから。


(おやつレベルで食べてきた民族はいくらでもいるでしょうが)


 このムーンショット目標5のサブプロジェクト、たしかにコオロギ推しではあります。

 ですがそれは家畜の飼料としてが主眼ではないでしょうか。現在使われている魚粉ぎょふんの代わりに、コオロギやミズアブを利用するとも書かれています。


 これなら自分も賛成です。

 家畜のエサが変われば肉の味も変わるでしょうが、食肉としての安全性には影響が少ないだろうと思われるからです(生物濃縮の問題はありますが)。


 ムーンショット目標5には他にも、

『大きさや形が不揃いで出荷できない食材を、3Dプリンターでおいしそうに盛り付ける』

 や、

培養肉ばいようにく生産システム』

 などもあります。非常に夢のあるプロジェクトです。


 大手マスコミのニュースや番組ばかりを見ていると、

『日本はダメだ、先進国から転落だ! もうコオロギ食うしかねえ!』

 という感覚に染まってしまうのではないでしょうか。


 ですが現実はそうではありません。

 先進的で役に立つ、しかし地味な研究をまだまだこうして続けているのですから。


 焦ってコオロギ食べるよりは、昆虫利用のすえを見守っていこうではありませんか。


 ◆ ◆ ◆


 人間とは、大変エゴな生き物です。


 少なくとも、自分がコオロギ食べたくないから、家畜に食べてもらおうと思うくらいには。


 農業の地下水汲み上げすぎて地盤沈下問題や、燃料・農薬使いすぎ問題などを解決するために。


 自分たちの環境を守るために、他の生物を利用する。

 ですが、そういう部分も含めて人間という生き物なのです。


 なので自分は人間として、日本人として、コオロギ食には断固としてノーを突きつけるものであります。

 その代わりにブタさんやニワトリさんは品種改良されたおいしいコオロギを食べてくださいね、とエールを送ります。


 エゴですみません。ですがこれもひとつの意見であると知ってもらえれば。

「培養肉&3Dプリンターってことは、いつかSFに出てくるようなケミカル色の謎肉を食える日が来るのか!」

 と密かに楽しみにしている人は、ぜひ★評価・感想などをお願いします!


 内閣府のムーンショット研究開発制度については

 https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/index.html


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― 新着の感想 ―
[一言] イタリアでは昆虫食禁止の動き。なのに日本はそれをしない理由は、国連で約束させられているからと、TOCANAさんの記事で読みました。 何でも日本政権は米国のジャパンハンドラーの左派(SDGS、…
[一言]  なーるほど、と府に落ちる一篇でした。この騒ぎ、特に興味はなかったのですが工夫のひとつということでいいじゃん、くらいに思っていました。このエッセイを読むと自分の視野が広がった気がしますね。分…
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