放浪者-17 『吸血姫からの提案』
書き続けますよ
「・・・やはり輝幸が」
瀬之口の話を聞き終えた俺の第一声に意外感を露にする。
「驚かないのね」
「・・・消去法でアイツしかできない上、魔王にも宣告されていたしな」
ただ、もう知っていた事実とはいえ、改めて言われると少しショックを受ける。
「それより、その輝幸に協力者がいたことに驚いたぞ」
その言葉に、瀬之口の瞳に憎悪が宿る。
「えぇ、誰かは知らないけど、必ず殺して見せるわ」
「・・・見当はついてるのか?」
「・・・・さぁね。夜一の彼女である私を嫌ってる人だけでもかなりいたと思うし、全く分からないわ。でも、人類側とクラスメイトを鏖にすれば特定する必要もなくなるわ」
「・・・それは夜一やお前と親しかった奴らも含まれるのか」
「私を冥界送りにした時点で、同罪。万死に値するわ」
俺みたいな陰キャで戦力的にも半端物だった奴にも、公平に接してくれたあの優しかった瀬之口が、こんなことを言うなんて。
憎悪は一人を変えるとは、よくいったものだ。
頼んではいないとはいえ、俺にもその一端があるように感じてしまい、俺は思わず
「すまない」
と謝罪の言葉を口にする。
それに対し、昔のコイツなら『私が勝手にしたことだから、気にしないで』とか言った事だろう。
だが今の瀬之口は、憎悪に憑りつかれた目の前の吸血姫。
故に
「・・・いらないわよ。そんな言葉。何の価値もないんだから」
「・・俺を殺したいのか?」
確認はするものの、殺される気など毛頭ない。
ではなぜ、こんなことを聞いたのか?
それは瀬之口が俺の背を任せられる相棒に成りえるか確認するためだ。
ココは、強力な魔物が跋扈する世界、仲間や武器は多いに越したことがない。
だが、俺を殺したい奴に背中を任せるのは、危険すぎる。
だから、コイツの返答次第では、俺はコイツを殺し、素材を使って己を強化する。
クラスメイトを素材にするのは、気が引けるが死ぬよりかはマシだ。
そんな思惑を抱いた俺に対し、瀬之口は静かに首を振る。
「・・・・いや曲がりなりにも被害者である貴方を殺そうとは思っていないわ。ただ、貴方の力はかなり使える。だから、もし悪いと思っているなら、私の従者として私の復讐に協力しなさい」
「従者?」
「知っての通り、私の種族は『真租』。そして、種族スキル『契約術式』は、人や魔物を自分の眷属にすることができる」
「効果は、『絶対に裏切れない主従契約を魔物や人に行うことで、アンデットまたは悪魔系統の魔物の作成する』、だったか」
「えぇ、絶対に裏切らない私兵。これほど信頼でき、頼もしい者はいないわ」
クラスメイトを私兵にする。
昔のコイツなら、発想は疎か忌避すらしていただろうに。
「勿論、強制ではないし、断ってくれても構わない。でもその時は―――」
「いいぞ」
「え・・・」
俺の二つ返事に驚く瀬之口に、飽きれたように肩を竦める。
「お前から言い出した事なのに、何を驚く」
「いやいや、普通クラスメイトの従者になるなんて罰ゲーム以外の何物でもないでしょう」
瀬之口は、最初に無茶な要求を突き付けて、本命をぶつける予定だったんだろう。
だが、当ては外れたな。
瀬之口の欲が『復讐心』なら、俺の欲は『自己強化』。
自分を強くするためなら、平気で自分の体を切り刻むし、誰が自分の上に立っても構わない。
「お前の従者になることで強くなれる。これ程、楽な強化は他にないだろう」
「えーーーー」
つまり、断る理由などないということだ。
改造を終えた俺は、早速行動するべく瀬之口の拘束を解き、両手を広げる。
「早速始めてくれ」
「なんの躊躇もないのね」
「お前から言い出した事なのに、何を躊躇う」
俺の挑発に、瀬之口は溜息をつく。
「ま、いいや。最強の魔物が従者になることには、変わりない事だし」
そう言って、瀬之口は俺の両肩を落とさせ、無理やり片膝を付けさせる。
「牙通るかしら」
「・・・稼働上、首筋は装甲が薄いから、其処がおススメだぞ」
「・・・ご忠告どうも」
瀬之口が俺の固い首筋に牙を付きつけて、血を流す。
その際、辛そうに表情を歪めていたが、見なかったことにする。
そして・・・・
<固体名『瀬之口美由紀』と固体名『犬井巧』で主従契約が締結されました>
<Sランク魔物『疑似神獣』のアンデット化を開始>
<失敗しました>
おい!
脳内のアナウンスにツッコミを入れるが
<代替案として、Sランク魔物『疑似神獣』の悪魔化を開始>
<成功しました>
どうやら杞憂だったらしい。
危なかった。
もし、失敗していたら、不平等条約以外の何物でもなかったことだろう。
<これにより、固体名・犬井巧はユニークモンスター『幻想悪魔獣』へと強制進化します>
強制進化?
ユニーク・モンスター?
聞きなれない単語に疑問を抱く俺の視界が揺れ、意識が暗転した。
一番書きたかった内容をかくまでは、少なくとも頑張りますよ




