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序章-後編 『敗走と殿?』

勇者→巧に視点が切り替わっています

「・・・・僕は魔王『ディノバルト』。超古代文明『ゼノビア』、その王の血を色濃く受け継いだ僕が、異世界から来た外来種ごときに負けるわけがないだろう」


生命力も魔力も底が付き欠けている俺たちに、魔王『ディノバルト』が嘲笑を浮かべた。


「っ!?撤退だ!!」


俺の声に、最上級職『忍頭』である中村亮介が印を結び


「忍法『幻霧』!!」


周囲に黒色に着色された霧を発生させる。


「みんな!!出口を目指せ!!」


俺のその命令に全員が出口に向かって、駆け抜け最上級職『盗賊王』である森野祥吾が荘厳な扉に触れる。


「スキル『マスターキー』」


盗賊系最上位スキル『マスターキー』

施錠された扉や宝箱、結界を触れるだけで10秒間解放するスキル。

魔力消費がない代わり、1日1回しか使えない。


固く閉ざされた扉が開き、そのまま森野が叫ぶ。


「急げ!!あと十秒で扉が閉まるぞ!!」


開け放たれた扉に向かって我先へとパーティメンバーが飛び込んでいく中、一人のクラスメイトが方向転換して立ち止まる。


「犬井!?何してる!!」


「犬井くん!?」


クラスメイトたちもその行動に気付き呼び止めるが、犬井は俺達の声には答えず、只々魔王とその鎧兵と向き合う。

まさか殿を務めるつもりか!?

隣に居たボブカット少女こと白波刹羅も気付いたのか。


「犬井くん!!駄目!!」


引き返そうとしたので、俺が彼女の襟首をつかんで引き戻す。


「お前のスピードと腕力じゃ無理だ。俺が行く!!」


勇者である俺なら、きっと連れ戻せる!!

そう確信した俺は、犬井を連れ戻そうと再び門を潜ろうとしたところで、肩を掴まれる。


「椎名!?何を・・・」


「・・・・アイツの犠牲を無駄にするな。それにもう間に合わない」


犬井の親友である椎名輝幸が辛そうに空いた拳を握りしめる。

その声に答えるように、分厚い荘厳の扉が閉まった。


「イヤー!!」


泣き叫び、門を壊そうと武器を構えた白波の腹部を椎名が殴りつけ意識を刈り取る。


「逃げるぞ。・・・巧の・・・親友が体を張って稼いだ時間を無駄にしたらマジでぶっ殺すからな」


目元が影になって見えないが、椎名はかなり憤ってるのが分かる。

俺は、その言葉に声を張り上げた。


「撤退だ!?」


その言葉に、俺たちは仲間を切り捨てて魔王城の脱出に心血を注いだ。

故に気付かなかった。

椎名の口元に嬉しそうな笑みが浮かんでいる事に。



巧視点


後方で閉ざされた扉の音を合図に、俺の体を縛っていた目に視えぬ拘束が解かれる。


「な、なんで・・・・」


一人、玉座の間に取り残された俺を屈強な鎧兵が取り囲む。


「・・・・・・・その様子、どうやら志願して殿を請け負ったわけではないようだね。なるほど、役立たずの中級職の行動を操作して囮に使ったか」


玉座に座った魔王が憐れむように俺を見るが、俺にはどうでもよかった。

行動を一定時間封じるスキル。それは―――――


「そんな芸当ができるのは、固有スキル『傀儡掌』しかないな。ということは、あれの仕業か」


魔王が可笑しそうに嗤う。


「嘘だ」


「君は『傀儡王』を持つ親友に裏切られたみたいだね!!」


俺の呟きを否定するように魔王が嗤いながら真実を告げ、スナップを鳴らす。


「せめてもの情けに楽に殺してあげるよ」


それに答えるように、にじり寄ってくる傀儡兵共に対し


「なんでだよ。輝幸」


俺は自分の武器を構えながら俺を嵌めた親友に呼びかけた。

これまでの日々と冒険を走馬灯のように思い返した。


眠い眼を擦って、熱波に照らされながら長い道を歩き、小難しい授業を受け、友達と生産性のない会話をしてそのまま家に帰ってゲームしてご飯食べて寝る。

なんてことないごく普通の生活。

きっと卒業まで行われると思われた日常。

だというのに、そんな日常は予想外の形で終わりを迎えた。

教室の中心に現れた巨大な魔法陣。

複雑な模様の描かれたそれが青白く光り始めてから、ようやく事態の異様さに気がつく。



「皆、教室から出ろ!!!」



 クラスい委員長である天上院が叫んだが、もう遅い。

 すでに魔法陣は発動準備が整っており、一際強い光が視界を満たす。

耐えきれずに目を閉じる。少し体が浮く感覚がした。

あちこちで悲鳴が上がり、次の瞬間には再び地面に下ろされていた。

そうが俗に言う。

 

 異世界召喚という奴だ。




其処から先はトントン拍子だった


「頼む、魔王の脅威から世界を救ってくれ!!」


目の前で一国の王らしい人・・・・俺たちを召喚したであろう男に異世界召喚ならではのセリフを吐かれ頭を下げられる。

お前等の事情など知るか。いいから元の世界に帰せと言うと


「魔王を倒してある称号を得ないと帰れない」


という某RPGのお株である『はい、いいえどっちを選んでもルート分岐ができない』というクソゲー仕様のセリフで謝られる。

仕方なく訓練し、魔王討伐する流れになる。


よく異世界召喚や転生なんてワクワクしていいよねという奴がいるが、それは自分が勇者もしくは主人公より強いチート能力に目覚めて無双できると信じているからであって。


「・・・・職業『クラフトマン』か。俗に言う鍛冶師だな。レベルを上げて中級職『バトルクラフト』になって戦闘も行えるようになるが・・・」


弱くもないが強くもない色々中途半端な能力に目覚めると色々冷めるというものだ。

そりゃ、最初は『鍛冶師?チートキャラ、キター!!』って喜んだりもした。

だが、物語と現実は違うもので、俺が造れるのは普通よりよく切れる剣や普通より貫通力が高い槍とかだった。

なので、『俺、またなんかやっちゃいましたか?』と惚ける万能主人公みたいチート武器を生み出せるわけでもなければ、『敵はすべて殺す!!』というどっかの眼帯主人公みたいに一から銃を作り出せるわけでもない。

だがそれでも、戦える鍛冶師・・・『バトルクラフトマン(俺』なりに、クラスに貢献してきたつもりだ。

少なくとも、恐怖に覚え王城に引き籠ったり、自分勝手に突然姿を消した奴らよりかは。

だから、悔しくて呪った。

その貢献を嘲笑う魔王にも、この事態を引き起こした親友にも、そしてその親友に騙されて一緒に逃げる勇者パーティと王国騎士団にも

何よりこのクソゲーを与えたこの世界に対しても


腕も足も切られ、槍であらゆる場所を貫かれた俺に、魔王が問うた。


「言い残すことはあるか?」


「・・・・ドイツもコイツもくたばれクソ野郎」


その言葉を最後に俺の意識はまるでテレビの電源ケーブルが抜かれたように、プツンとキレた。


この物語は魔王に負けてから始まるので、駆け足で説明しました♪

世界観の設定は、次回説明します。


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