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復讐者-3 『すべてを失った戦乙女』

城下町以降の事件で、姪の殺人容疑を掛けられた私——————瀬之口美由紀は、城の牢獄に繋がれていた。


「出ろ」


それから1週間後、数名の騎士たちに連れられた私は、謁見の間に連行された。

ハイド様と大臣が、犯罪者を見るような冷めきった眼で私を一瞥し、クラスメイトの皆は悲しそうな表情を浮かべる。


「聞いて、皆!!私は――――」


「おい!!勝手にしゃべるな!!」


槍で私を拘束していた騎士たちが私に怒号を注ぐ。


「それでは、仲間殺しの大罪人———瀬之口美由紀の断罪裁判を始める」


「違う!私はやって―――」


「おい!黙っていろ!裏切りの魔女め!!」


私はそれを否定するが、私の言葉はすべて却下され、ハイド様の横にいた大臣が巻物を広げる。


「仲間殺しの大罪人———瀬之口美由紀。貴女には、犬井巧、磯田姪。両名の殺害に対する容疑が掛かっている」


姪だけでなく、犬井くんのこともすべて私に押し付ける気なの!?

私はキッと真犯人である椎名輝幸を睨み付ける。

だが、彼は表面上、悲しそうな表情をしてはいたが、その瞳は爛々と喜びに輝いていた。

コイツーーーー

私はその態度に怒りを覚える。

そうこうしている間にも裁判が続く。

事件の決め手になったのは、姪の殺害に使われていた凶器が私のスペアである小刀であったこと最後に姪があった人物が私で会った事だった。


「君は、この『視えざる手』で犬井くんを魔王城に置き去りにし、その真相を突き止めた磯田殿を発覚する前に殺した。そうだね」


大臣が腕輪型の魔道具を懐から取り出す。


固体名: 視えざる手

分類:魔道具

ランク:S

耐久度:200

付与スキル:『傀儡掌』


「ち、違います!!私は―――」


「美由紀」


私の言葉を恋人であり、勇者である夜一が呼び止める。


「信じて。夜一。私は本当に―――――」


夜一だけは違うって分かってくれる。

きっと、反論してくれるはずだ。

私は絶対の信頼をよせて彼を見る。

だが――――


「美由紀。本当の事を言ってくれ。そうすれば、罪は軽くなるはずだ」


「え・・・・」


夜一からの言葉は、私の欲しかった言葉ではなく、自白を促す言葉だった。

何よ。それ・・・・。

なんで、そんなことを言うのよ。

私の視界がぐらりと揺れる。

なにこれ。気持ち悪い。


「そうだよ。美由紀!本当の事を言って!!」


「犬井だけでなく、磯田を殺したことは許せないけど、せめて死刑は避けられるように俺達の方から頼んでやるからよ!!」


「そんな嘘をついても、瀬之口さんの立場が悪くなるだけだよ!!」


恋人の夜一だけでなく、クラスメイト全員が私に、やってもいない罪を自白するように懇願する。

その光景に、私は怒りを通り越し、呆れてくる。

自然と私の口から嗤いが込み上げてくる。


「・・・・馬鹿みたい」


ホント、馬鹿みたい。

私を嵌めてほくそ笑む椎名にも。

片想いの相手を殺されたのに真犯人を探さなかった白波さんにも。

散々、私に助けられた癖に私の言葉を信じないクラスメイトにも。

椎名ごときの手に踊らされるハイド様や騎士たちにも。

恋人が処刑されそうなのに、信じるどころか助けようともしない夜一にも。


そして、()()()()()()の為に、命がけで剣を振ってきた私にも。


私のその一言に、ハイド様・・・・いや、真犯人である椎名の掌で言いように転がされているのだから、ハイドでもういいか。

ハイドが深く溜息を付く。


「仲間を二人も殺しておいて反省もしないとは。残念だよ。瀬之口美由紀」


「・・・・・私もアンタが此処まで馬鹿だったことに残念よ。馬鹿キング」


「貴様~!!」


心底失望した私の侮蔑に、騎士や大臣が怒りの表情を浮かべる。


「・・・・判決を言い渡す。仲間殺しの大罪人、瀬之口美由紀。人類側の裏切り行為として、汝を極刑————『冥界送り』とする」


その言葉に、騎士やクラスメイトたちがざわつくが、私にはどうでもいい。

ハイドが手に持った王笏を掲げ、長ったらしい呪文のようなものを唱えだし――――

ロイドの前に、巨大な扉が出現する。

扉の両側には、戦乙女の彫刻が異様な細かさで施されていた。


「・・・・まるで、『審判の門』ね」


冤罪を掛けられ、私の反論を無視した愚王の分際で、神様みたな魔法を使うものだ。

門を眺めながら私は皮肉交じりの笑みを浮かべる。


「王家代々伝うる固有魔法『虹と闇の扉(エターナル・ゲート)』。魑魅魍魎の住人たちが住まう『冥界』へと続く扉だ」


随分とまぁ。中二くさい魔法だこと。


「最後に何か言い残すことはあるか?」


ハイドのその言葉に私は溜息を零す。

私の反論は聞かない癖に、遺言だけは聞くなんて。


「・・・・叡王ぶってんじゃないわよ。阿保キング」


「開門」


扉が荘厳の音を立てて、開く。

私の目の前に先の見えない闇が広がり、黒い触手が私の体を縛り上げる。


「趣味わる」


触手によって、扉へと引きずられていく私を


ある者は、悲痛そうな表情で

ある者は、冷徹な表情で

ある者は、嘲りの笑みで


見詰める。


中には、視線を逸らしたり、泣き崩れるのもいる。

そんな彼らに私は優し気な表情を浮かべ


「・・・・・・・必ず殺してやるから」


呪いの言葉を送った。


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