放浪者-8 『待ちに待った進化!?でも―――――』
ボス戦はまだまだ続くよ♪
破れかぶれの一撃で一気に状況が逆転した事に俺は、未だに呆けている女王・アレクシアに精神付与されたウォーター・カッターを放つ。
女王の額についている第3の眼を撃ち抜く寸前に、アレクシアの左前にいた騎士が飛び出し身を挺してガードする。
騎士の左肩を撃ち抜いたウォーター・カッターの軌道が僅かにズレ、アレクシアの左頬をレーザーが引き裂く。
そこで、アレクシアが正気を取り戻したのか、顔を怒りで歪ませる。
「そりゃ、我が子を殺された上にNTRれたら、キレるよな。つーか、美人はブチ切れても美人ってホントなんだな」
アレクシアにとっては、幸いだったのか、『洗脳(強)』はごく稀に発動状態異常だったらしく、アレクシア本人と被弾した騎士は陥っていない。
「こればかりは運なのかもしれないな」
実験動物になった挙句、谷底に堕とされた俺が運に頼るなんて、皮肉が効いているな。女王の第三の眼が光ると、俺を逃がさんと取り囲んでいた蜂たちが俺に一斉に襲い掛かる。
「物量で押し込んできたか。でも、それは悪手だぜ。なぁ、相棒」
俺は洗脳下にある騎士の肩を叩く。
「・・・・・」
うん。土堂の無視。
ま、そりゃそうか。
少しショックを受ける俺の背後に蜂が迫る。
それに対して、俺は右手の長爪で迎撃しようとするが、その前に騎士が蜂たちを刺し殺す。
「流石レベル90。味方なら心強いぜ」
俺は騎士と背中合わせになるように長爪を構える。
「背中は任せたぜ。相棒」
その共闘が余計にアレクシアの感に触ったのだろう。
右隣の騎士が蜂たちと合流し、俺たちに襲い掛かる。
アレクシア本人も先程と違い、毒魔法で積極的に攻撃を始めた。
☆―――――――――――――――――――――――――――――――――☆
あれからどれくらいの時間が経っただろうか?
襲ってくる騎士の突きを躱した俺は、長爪で騎士の頭部を引き裂く。
俺はすかさずスキル『世界眼』で騎士のステータスを確認する。
固体名 なし
種族 ナイト・ホーネットLV90
魔石ランク:A+
ステータス
HP:4890/7000
MP:4000/4000
物理攻撃値:6000
魔法攻撃値:8000
物理防御値:7000
魔法攻撃値:2000
魔法防御値:8000
敏捷値:13000
状態異常:『混乱(強)』
スキル
『夜目』『飛行』『ポイズン(強)』『毒無効』『上級槍術』『槍聖術』
状態異常:『混乱(強)』
上下左右の方向感覚を狂わせる。
持続時間:3分
チッ、外れだ。
どうやら、称号『アドルフ・ヒトラー』の精神攻撃によって発生する状態異常は、ランダムらしく、その中でも『洗脳(強)』は極まれにしか発生しない。
俺は何度目かの外れに舌打ちしつつ、方向感覚が狂った騎士の腹部を蹴り飛ばす。
戦力差を覆す為に、騎士を仲間にする為だ。
致し方ない。
何せ
「邪魔だ」
普通の蜂では状態異常が出る前に、引き裂いてしまうからだ。
チート武器ならではの悩みだな。
内心で溜息をつく俺の視界に、第三の眼を光らせるアレクシアが映る。
「やべっ」
俺はウォーター・ジェットを切り、地面に落ちる。
その瞬間、さっきまで俺がいた場所に、眩いレーザーが放たれる。
「あぶな!?」
俺の魔石を2つ一気に潰したレーザー攻撃に俺は冷や汗をかく。
まぁ、人形だから実際にはかけないんだけど・・・・・。
俺は、煙を上げる第三の眼を静かに観察する。
これまでで分かったことがいくつかある。
1つ目は、溜めもあるが、撃った後のインターバルがあるらしく、乱発が出来ないということ。
2つ目は・・・・・
固体名 『アレクシア』
種族 ホーネット・クイーンLV100
魔石ランク:S-
ステータス
HP:10000/10000
MP:3900/9000
物理攻撃値:1000
物理防御値:8000
魔法攻撃値:15000
魔法防御値:8000
敏捷値:13000
スキル
『夜目』『飛行』『ポイズン(強)』『毒無効』『毒物合成』『毒魔法(上級)』『HP自動回復』『MP自動回復』『邪眼』『鱗粉』『上級狙撃術』『産卵』『回復魔法(上級)』『指揮術(上級)』
MP消費が半分以上消費すること。
そりゃ、あんな一撃必殺を何度も連発できたら、反則ものだからな。
そんなことを思いつつ、俺は何体目かの蜂を引き裂いたところで、俺の脳内に待ち望んだ声が響いた。
<固体名・犬井巧のレベルが上限である50に達しました>
<固体名・犬井巧は『リビングアーマー』への進化可能になりました>
<固体名・犬井巧は『解体人形』への進化可能になりました>
<固体名・犬井巧は『ゴースト・ドール』への進化可能になりました>
<固体名・犬井巧は『デットーイ・キマイラ』への進化可能になりました>
おお、待ち望んだ進化!?
待っていたぜ!!
だけど・・・・
「うぉっ!?」
俺は、混乱から回復した騎士の薙ぎ払いを、上半身を逸らす事で躱す。
進化中は意識を失う為、そんな暇はね―――!!
俺は、その脳内アナウンスを無視して、何度目か分からない斬撃を騎士に打ち込んだ。
感想と評価増えないかな