放浪者-6 『一撃必殺は、お前の専売特許ではない』
俺TUEEになりそうだったので、ここらで強敵を出しました。
感想をくれると嬉しいです♪
徘徊する蜂の胴体が5匹まとめて切り裂かれ、絶命する。
<固体名・犬井巧のレベルが23になりました>
<固体名・犬井巧のレベルが24になりました>
<固体名・犬井巧のレベルが25になりました>
ウォーター・ジェットの超加速を止めて、地面に着地した俺は蜂たちを切り裂いた右腕の五指に取り付けられた超振動する長刀を一瞥する。
「賢〇の孫に出てくるバイブレーシ〇ン・ソードを参考に作ってみたが、何とかなったな」
蟷螂の鎌と蜂の背筋を素材にして生成した超振動刀ならぬ超振動長爪の凄まじい切れ味に感心する。
そう。
あの後、蟷螂と蜂の死骸を回収した俺は、試行錯誤の末に今の俺が造れる最強の近接武器を完成させた後、自身の右腕と差し替えた。
最初は、スキル『自動修復』で一時的にしか改造できないのかと懸念したが、どれだけ時間が経ってもそういう兆候が見られないことから杞憂だったようだ。
固体名:長爪 (中毒)
分類:刀剣
物理攻撃値:+4000
耐久度:1500
付与スキル『断絶』『ポイズン』
「痛みを感じないとはいえ、狂ってるよな。我ながら」
そんな独り言を抱く俺の背後から、蜂の集団が襲い掛かるが、俺は焦らず、左腕の五指をパーの形に広げる。
「Fire。なんちゃって」
すると、ご指の先から5条のウォーターカッターが飛び出し、蜂たちの心臓や頭蓋を貫く。
その内の何匹かの蜂がそれを躱すも、そんなのは想定の範囲だ。
俺は足底に埋め込んだウォータージェットの超加速で一気に距離を詰め、右手の長爪で蜂たちの胴体を一瞬で切り裂く。
「設置型ではなく内蔵型にして正解だったな。バランスがとりやすくて戦いやすい。それに内蔵しているせいか毒水の生成スピードが速い」
そう。
長爪を完成させた俺はあの後、左腕と両足にも改造を施した。
「右手は近距離特化の『長爪』、左手は遠距離特化の『ウォーターカッター』。両足は移動手段の『ウォータージェット』。我ながら最強だね」
<固体名・犬井巧のレベルが26になりました>
<固体名・犬井巧のレベルが27になりました>
<固体名・犬井巧のレベルが28になりました>
改めて自身の作ったチート武器に満足した俺は、『ウォータージェット』ではなく自身のスピードで谷底を歩く。
なぜなら――――
「MPも無限じゃないし、獲物がいないときは自身の足で走らないとな」
強力な魔物が徘徊する谷底だ。
用心に越したことはない。
俺は初心を忘れず、暗い谷底を徘徊し続けた。
あるかどうかも分からない出口または、光さえ届かない谷底を脱出する為のスキルを求めて。
徘徊する度出くわす蜂たちの元を立つべく、俺は奴らが頻繁に現れるルートを疾走していた。
理由はただ一つ。
レベルが上がりにくくなってきたからだ。
たまに出会う蟷螂を倒すとレベルが上がるが、最初の頃のようにレベルが一気に上がらなくなっていた。
なので、俺はレベルアップを目指し、蟷螂よりも格上と思われる蜂の巣の主---俗に言う女王蜂の討伐に踏み切ったのだった。
因みに現在の俺のステータスはこんな感じだ。
『固体名 犬井巧
種族 ポイズンドール LV46
魔石ランクD+
残機3/3
職業 バトルクラフトマン
ステータス
HP:2400/2400
MP:1200/5500
ST:∞
物理攻撃値:6000(右)、9000(左)
物理防御値:1000
魔法攻撃値:1000
魔法防御値:1000
敏捷値:4000(通常時)、11000(一時加速中)
スキル
『自動修復』『自動魔力回復(NEW)』『魔石消費』『パラライズ(大) (NEW)』『ポイズン(大) (NEW)』『スリープ(小)』『世界眼』『初級斧術』『上級剣術(NEW)』『中級ハンマー術』『初級ナイフ術』『初級槍術』『精神統一』『上級狙撃術』『初級弓術』『初級盾術』『サーチ』『マッピング』『次元収納』『錬金』『夜目』『遠視』『痛覚無効化』 『サライ』『睡眠無効』『霊眼』『毒薬合成』
称号
『武蔵野弁慶』『グレゴリー・ラスプーチン』『アドルフ・ヒトラー』『ネロ・クラウディウス』
中級から上がらなかった剣術と狙撃術がすんなり上がった。
ジャイアント・キリング、様々だ。
しばらくし、何体目かの蜂を倒した俺の目の前に巨大な雀蜂の巣を彷彿とさせる球体が現れる。
「おりょりょ」
想像以上の大きさだ。
「女王蜂さん、あ~そ~ぼ~」
壁面から出ぱっている巨大なテラスに装着されている巣の付け根に狙いを定める。
普通の弓矢では巣を落とすことはできないだろう。
だが―――――
「最強の貫通力と切断力を持つウォーター・カッターの前ではそんなものは無意味デ~スってな」
俺は遊〇王のペガサ〇を彷彿させる口調でテラスを、射出された毒水が容易く切断される。
支えを失った巨大な巣が、重力に従い落下し、轟音と衝撃を上げて地面に叩きつけられる。
<固体名・犬井巧のレベルが47になりました>
お、今ので巣にいた幾分かの蜂が死んだのか、俺のレベルが上がる。
感心する俺に激怒した蜂たちが威嚇するように羽音を立てながら、壊れた巣から這い出てこようとしている。
「させるかよ」
俺は向かってくる前に、蜂たちの頭蓋を『ウォーター・カッター』で打ち抜いていく。
巣の瓦礫から這い出るのに苦戦しているのか、持ち前の敏捷性を発揮できていない。
フハハ、レベル80の格上たちがゴミの様だ。
一種のボーナスステージを彷彿させる光景に、俺は内心笑みを浮かべたその時
「ズドッン!?」
土煙から超高速で飛来した何かが俺の左側頭部と左目————そこに内蔵されていた俺の魔石を貫き粉々に破壊する。
「え!?」
突然の光景に呆気になる俺のHPは、あっという間に0になり
<固体名・犬井巧の魔石が1つ破壊されました。固体名・犬井巧の残機は残り2になりました>
<固体名・犬井巧のHPが0になりました。右肩に内蔵された魔石を使用してHP及び部位破損を修復します。固体名・犬井巧の残機は残り1になりました>
スキル『魔石消費』が、称号『ネロ・クラウディウス』によって生成・貯蔵した魔石を使用して俺の体とHPを全回復する。
突然の不意打ちからの一撃必殺に驚く俺に見せつけるように、土煙から蜂にしては小柄の5体の影が映る。大きさは魔物にしては小さい。人間みたいだな。
そして、その推察は当たっていた。
「・・・・おかしくね」
その推察は正しかった。
ローマの騎士を彷彿させる金色の甲冑の背中から蜂のような羽を生やした魔物4体が奥にいる1体の魔物を守護するように極太のランスを両手に構える。
「騎士は羽がまだ蜂ぽいから許すけど、お前はどう見ても蜂じゃないだろ。なぁ、女王様」
騎士に守られた女王は、美女の体に硬質な蝶を彷彿させるような金色のドレスアーマーが接合したような姿をしていて、額には、王冠の代わりに金色の瞳が覗かせていた。
瞳から煙が出ていることから、先程の一撃必殺のビームを撃ってきたのは、どうやらあの女王様の仕業のようだ。
そんな美しくも恐ろしい攻撃手段を持つ女王様は、俺の言葉が分かったのか知らないが、ニッコリと微笑み、その華奢な手を勢いよく振り下ろす。
それが合図だったのか、4体の内2体の黄金騎士が耳障りの羽音を立てて俺に飛来した。
女王蜂の姿がイメージが付きにくい方は、ゴット・イーターのサリエルを金色にして人間サイズに落としたような姿だと思ってくれるとありがたいです