ビバ悪役令嬢!
リレイナは背筋を伸ばし顎を上げ、その傲慢な歩き方を味わうようにゆっくり回廊を歩いた。
彼女に気づいた者たちがサッと道を開けていく。
(やばっ!道を開けられるとかモブにはまずないから。気持ち良すぎる〜!)
(…ん?)
左側の廊下で何人かが集まっている。
(うほっ!あれってもしかして…もしかして…あのセリフが言えるチャンスじゃない?!
んーちょっと遠回りになるけど…でも…言いたい!!言いたい!あのセリフ!!)
彼女は左に曲がるとまっすぐ彼らに向かった。
「おどきになってくださらない?」
廊下は広い。彼らが集まっていても、脇には3〜4人余裕で通れるほどのスペースがある。
しかし彼女はわざわざ彼らの中へ直進した。
ただその一言を言いたいがために…。
彼らは突然の声に驚くと同時にあたふたと道を開けた。
(くぅーーっ!気持ちいい!前の私を思い出した今言うこのセリフ!味わい2倍増し!)
(しかも、たった一言で男の子達が道を開ける日が来るなんて…ビバ悪役令嬢!)
(いけない!早く会場に行かなきゃ!ユリアスを待たせてしまうわ!せっかくの婚約破棄イベントなのに!)
「婚約破〜棄、婚約破〜棄」
彼女は浮かれながら…予定より遠回りになってしまったが…会場へ向かった。
「リレイナ、遅かったな」
婚約者でありこの国の第一王位継承者である王太子のユリアスが彼女に声をかけた。
隣には、リレイナと別れた後あらたな婚約者になるであろうと言われているシェアラがピタリとくっついている。
(これがヒロインと王太子ね、了解了解。
あら、ユリアスってこんなに美形だったんだ!たしか紗千はユリアス命だったな。ま、関係ないけど。私の推しはあくまでリレイナ様!)
「婚約者を待たせて何をしていたのだ」
「いろいろ」
「は?」
「あなたこそシェアラ様と楽しんでいらっしゃったんでしょ」
「なにを?!」
(あーいいわ!もっと睨んで!もっと怒って!)
「君のシェアラへの数々の嫌がらせ、私が知らないとでも思っているのか?」
「なんのことでしょう?」
「しらじらしい。今ここで彼女に謝罪しないなら私にも考えがある」
「あら、どんなお考えでしょう?ちなみに私は謝罪などいたしません」
(私、悪役令嬢ですから!)
「君のその態度、常日頃の行いはおおよそ私の妃に相応しいものとは言い難い。
君に改める気がないなら…この場で婚約破棄だ!」
「改めるとは?」
「ここで謝罪するということだ。私にも、シェアラにも」
「御免被りますわ。なぜ私が?」
「…それが答えか」
「ええ、それが答えですわ」
(さぁ、早く言って!)
「いいんだな」
「ええ、もちろん。あなたにそんな勇気があるなら」
「なんだと?」
「婚約破棄なんて大変なことだわ。そんなことあなたにお出来になるの?決断できるのかしら?」
(さあ!怒るのよユリアス!だって私は悪役令嬢!)
「リレイナ・ツェルマール!お前との婚約を破棄する!!」
「!!!ユリアス様…」
「今更遅いぞ」
「あああーーそんなぁーーー」
彼女は膝をつき崩れ落ちた…ニヤける顔を隠すために。
(ヤバーーーーーい!気持ちいい!なにこれ最高!大優勝!これで…これで…私は…本物の悪役令嬢になれたんだわ!!)
ニヤけた顔が元に戻ると彼女は立ち上がった。
「さ、帰ろ」
(あ〜あ、楽しかった!でも早速終わっちゃったなぁ、婚約破棄イベント)
彼女は何か楽しいことがないかとキョロキョロしながら出口へ向かった。
周りの者達は彼女に絡まれるのではないかと恐れるように彼女から離れていった