「最近、彼の様子が変わった気がする」④
二週間以上のスランプを乗り越えた職員です
そうこうしているうちに、ねこさんが料理をもって現れた。分厚い肉が高温の鉄板の上で焼かれ、油が弾ける軽快な音はますます食欲をそそった。
「はぇ~。まさかこんなにも美味しそうなものが出てくるなんてなぁ…」
「…どういう意味ですか」
「ああ、ごめん!良い意味だから!美味しそうってのはホントだから!」
「そう…ですか。ありがとうございます」
そういって、彼女は軽く礼をした。その表情はどこか嬉しそうに見えた。
危なかった…。もうちょっと言葉を考えてから発言せねば。さっきから彼の視線が痛いほどに突き刺さる。おおこわいこわい。
見た目からもうわかっていたが、美味すぎる。本当に元アノマリーが作ったのかと思うくらいの出来だ。天才かな。
「ホントに美味いな、これ」
「そりゃ、ねこさんが作ったものは何でも美味しいにきまってるだろ?」
「そ、そうなのか。まぁ、ほんとにそうかもしれないな…」
「な?やっぱりねこさんは何をとってもNo.1だからな!」
…彼は不思議だ。彼はずっと嬉しそうに話していて、俺はそれをただ聞いていただけだったのだが、なんだか俺まで楽しくなってくるようでそれがとても不思議だった。
やがて、俺の食事も終わった。
「ご馳走様。とても美味しい料理だったよ」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、お代をば…」
そう思ったが、俺はまだ一つ疑問が残っていた。
「なぁ、ねこさん。そういえばメニューに値段とか書いてなかったんだけど…」
「あっ、そういえば説明を忘れていました。このレストランではお代金は頂戴いたしません。」
「頂戴いたしませんって……じゃあ一体…」
「はい。その代わりに、帰る前に貴方から私に何か「お話」を聞かせてほしいのです。短くても作り話でも構いません。何かエピソードを聞かせてほしいのです。」
なるほど…代金の代わりにねこさんに「お話」を聞かせる…か。
「いいね!なかなか面白いシステムじゃないか。」
「ありがとうございます」
「とはいっても「お話」…か。すぐには思い浮かびそうにないな」
「俺の場合は、少し昔のことを話したけど、別に簡単な作り話でもいいんだぞ?」
「作り話……か。おっ、じゃあ即興だけど簡単に俺の「作り話」を聞いてもらう感じでいいかな?」
「はい。お願いします。」
ねこさんはなんだかワクワクしているようにみえた。
「それじゃ、始めるとしますか。」
……………………………………………
「こんな感じだが、どうだった?」
「どうだったって…まずお前の口からそんな話が出てくることなんて想像できないってくらいの話だったな。」
「私はとても素敵だと思いましたよ。すごいです。」
「へへっ、ねこさんに褒められるとはなかなか嬉しいもんだね。」
「しかし…お前その話よく即興でできたな。」
「え?あぁ、まぁそりゃ当たり前だろうな。目の前に丁度いいテーマの元がいるんだからな」
「「?」」
「ははっ!まあいいか。ほんじゃそろそろ帰るとするよ。」
「はい。また来てくださいね」
「是非とも。また来るよ。」
「よろしくおねがいします」
「それじゃ。お幸せにな、お二人さん。」
去り際、彼の顔が少し赤らんでいるのが見えた。
「ねこのレストラン」…か。まさかこんなところだったとはな。不思議とまた来たくなるような居心地のよさだった。これも「彼」と「彼女」が生み出したものなのだろうか。なんにしろ、また近いうちにからかいにでもいってやろう。
さて、上にバレないうちにさっさと仕事に戻るとしよう。
「最近、彼の様子が変わった気がする」 終
これにて一応完結です。ただ、エピローグやお代の内容など書きたいものはまだ残ってるのでもう少しだけ続きます。よろしくおねがいします。Rでした。
Special Thanks みこと様 @mikoto_Thaumiel
ねこのSCPレストラン様 https://www.youtube.com/channel/UCsUE9GXFRsb1ISA2PE0q96A
@040_jp_resto