「最近、彼の様子が変わった気がする」②
「ねこのレストラン」
扉の前のぶら下げられた小さな看板にはそう書かれていた。俺は少し戸惑った。いや、戸惑うのも無理はない。普通に考えると、こんな陳腐なコンテナがレストラン?と脊髄反射で思うはずだ。しかし、もう一度考え直してみると、ここは謎に満ちたscpを収容するための施設。こんなことがあってもおかしくないのだ。流石財団とでもいっておこう。
いや、今はそんなチープな自問自答に時間を使っている場合ではない。今は彼の動向のについて調べることに時間を割くべきだ。そう思った俺は、この中に潜入することにした。勿論、上には何も許可はとっていないが、まぁ何とかなるだろう。
いざ潜入しようとすると、体が緊張してきているのがより伝わりやすくなった。いくらレストランと書かれていたとはいえ、もしかしたら中ではさながら宮沢賢治の「注文の多い料理店」のようなシステムが広がっているのかも知れないし、はたまた、そんなことよりも恐ろしいものが待ち受けているのかもしれないと、癖の悪い妄想が働きそうになるが、今は落ち着こう。とりあえず潜入だ。
俺は、少しだけ扉を開き、隙間から中の様子を覗くことにした。中の様子は、普通のレストランとなんら変わりがない。しかし、これがコンテナの中だということを思い出すと、改めて異様な光景が広がっているのだということを認識させられる。どうやら、喫煙席まであるらしい。俺は中がもっと知りたくなり、店の中へはいった。中へ入り、改めて中を見渡すと、狭すぎず広すぎず、割と快適と感じる広さだった。大きさだけはコンテナと一緒ってところか。(当たり前のことだが)
レストランを見渡していると、
「あの…お客様……ですか?」と後ろから少女の声で呼ばれた。思わず方が上がってしまった。姿こそ見えないが間違いない。このレストランにいるscpだ。声をかけられたほうに顔を向けると、そこには一人の少女が立っていた。俺は俺の目を疑った。scpとするにはあまりにも可愛らしく美しかったのである。しかし俺はいったん落ち着いて、この少女に
「すみません、ここに***(彼の名前)という人はきていませんか?」と普段の俺なら想像もつかないほど丁寧な口調で質問した。すると、少女は少し驚いたようだったが
「彼なら今そこにいらっしゃいます…」といい、彼のいる奥の席まで案内してくれた。
「お前、どうしてここに⁉」と彼は驚いたような顔でこちらをみていた。俺は、とりあえずこれまでの経緯を話すことにした。別に、嘘をついてもよかったのだが、それはそれでなんだかややこしくなりそうな気がしたため辞めておいた。話をすると彼は
「なぁんだ、知りたきゃもっと早く聞けば良かったじゃないか!」と笑って答えていた。
ふと、彼のテーブルに目を向けるとそこには、熱い鉄板の上でまだ僅かに音を立てながら焼かれているハンバーグステーキが目に入った。ふと、これについて聞いてみると
「そりゃレストランなんだから、テーブルの上に料理があったておかしくないだろ」と返された。
ならばと思い、俺も何かを注文しようとした。すると、先ほどの少女がてこてこと歩いてメニューを持ってきてくれた。俺は彼に
「なぁ、さっきの子ってもしかして…」と少し詰まらせて問うと
「あぁ、彼女はここの従業員で、元はscp-040-JPっていうscpだったんだよ」と彼は答えた。その番号には聞き覚えがあった。かなり強力なミーム汚染をおこすscpだったというのは何となく思い出した。だが、ここで疑問が浮かび上がった。
疑問その1 「このscpもとい彼女はなぜ人型になっているのか」
彼女は人型のscpではなかったはずだ。これについて彼にそれとなく投げかけてみた。しかし、ただ「知らない」とだけ返された。これが嘘か真かはわからないが、とりあえずこの質問は保留にしておくことにした。そして、俺にはもう一つ疑問が生じていた。
続く