長生きする方法
孔雀石=マラカイト
藍銅鉱=アズライト
共生してとれることがある。
モジカは、一緒の布に包まれた、ニルアドミラリ博士の顔をうっとりと眺めました。
ずっとずっと前から、まだ若い博士がその神経質そうな長い指を粘土板に刻まれた文字に這わすたび。
モジカ達文字の精霊の一群は、とてもとてもお腹が空いて、お腹の虫がぐううと、音を鳴らすのを聞きました。(※実際には鳴りません)
少し縮れた黒髪は、光の角度によっては、アズライトめいた青い輝きが見えます。
「あたしにマラカイトを化粧するよりも、博士の方が似合うみたい……」
そう博士を見つめていると、博士がぱちりと目を開けました。
「ああ……。モジカだね……。夢じゃ、なかったんだ……」
その、はにかんだ笑顔! モジカは、とってもとってもお腹が空くのを感じました。
ぐうう。
「ははっ! 夕飯の残りがある。良かったら、朝飯にしようか」
そう言って、博士はテキパキと準備してくれます。
水に果汁を絞ったもの、薄く平べったいパン、野菜くずのスープです。
モジカは、そんな博士に見惚れ、次いではっとしました。
モジカは、ヒトのご飯を作れません!
つまり、ヒトを長生きさせる方法が、分かりません!
モジカはあたふたとして、文字の精霊達も一緒になって、ざわざわとしました。
博士の居室の粘土板が、カタカタと揺れます。
「おや? 地震かな。どうも、落ち着かないね。まあ、食べてしまおうか」
どうしよう? ミイラにしてしまうのだっけ?
朝ご飯を食べ、ヒトの体でお腹がふくれるのを体験したモジカは、博士があたふたとお仕事に行くのを見送って、さて、どうしたものかと考えるのでした。