文字を愛し、文字に愛された男
むうん。ノープロット。
その名は、ニルアドミラリ博士!
王国のみんなの期待の星、あらゆる文字に精通した男!(二つの意味で!)
博士は、どうも最近、国民の皆さんが、文字の熱に浮かされているようだと推測しました。
そして、国王に報告しました。
「国王陛下、どうも近頃、粘土板や、葦編み書に書かれた文字に、生命活動の源を吸われているような者が多く見受けられます。」
「むううん。儂も気になっておった。最近は、報告の粘土板や葦編み書を見るだけで、頭が痛むのだ。ニルアドミラリよ、可及的速やかに、原因解明せよ。」
「ははっ。仰せのままに。」
ニルアドミラリ博士は、まず、文字によって、どういう症状が出ているのかの、質問調査を行いました。
そこで衝撃の結果……!
文字を読むと、目が悪くなる者、圧倒的多数!
他にも、体の不調を訴える者、変わったところでは、文字で書かれた理想の男性(女性)にしか、興奮しない者もいました。
博士は質問調査を取ると、次に、粘土板職人のところへ行きました。
「おっ、博士! 新作のねんどろんこ作ったけど、どうよ? 博士好みの曲線だよ?」
とてもまぶしい笑顔で、親しみを込めて話しかけてきたのは、国一番の粘土板職人、イェットです。
博士もまた、現実の女性には興味はなく、かと言って、文字の世界の女性にも満足しませんでした。
博士は、文字の世界での理想の女性を、今粘土でさわれる偶像として、自分の居室に飾り、話しかけているのです。
「イェット、ついにできたのか! ほほう、これはすばらしい曲線だ! さすがはイェット、王国一の、粘土板職人!」
博士はすっかりうれしくなって、早速イェットの作ったねんどろんこを持って帰りました。
そうしてその夜、不思議なことが起こったのです。