狼の名前
今回は残酷な描写無し
優斗はある高層ビルの地下を、さ迷っていた。
(にしても、何処だ?)
今日から配属になった『政府特務課』
三十分程前から探しているが、それらしい場所は見つからない。
「あの、すいません。
政府特務課って何処ですか?」
優斗は近くにいた警備員に話し掛けた。
「失礼ですが、お名前は?」
「今日から配属になった伊川優斗です。」
名前を言うと、警備員は無線で誰かと話始めた。
「ん、伊川優斗?ねぇ、京一。誰だっけ。」
「最近一人辞めた空き分を、新しく配属してもらったんだろ。」
「あー!そうそう。
ってことだから案内してあげて。」
「分かりました。
じゃあ、伊川君。案内してあげるからついてきて。」
「は、はい。ありがとうございます。」
「ここだよ。
また、分からなかったことがあったら、何でも聞いてね。」
「はい、ありがとうございます。」
警備員は帽子を被り直して、さっきの場所へ戻って行った。
(大丈夫だよね。
一応、ちゃんとした区の仕事だし...けど、変な人出てきたらどうしよう・・・
よし!)
優斗は覚悟を決めて、扉をノックした。
「どうぞ~。」
女の気抜けた声が聞こえて、安心して扉を開けた。
「いらっしゃいませ♪」
「うわっ!!」
予想外に7、8歳の女の子が現れた。
外国の血でも入っているのだろうか。
金髪に蒼い瞳。そして、色白の肌は対照的な赤いフリルのワンピースに包まれていた。
「こら、エリカ。人を脅かすなと何時も言ってるだろ!」
「エリカ嬢。お遊びが過ぎる。」
エリカと呼ばれた女の子は頬を膨らませて、
「もう、二人してそんなに言わないでよ!
ゆーと。これから宜しく!」
エリカは無邪気な笑みを浮かべて、男と女の元へ走る。
男は20歳前半ぐらいの長身だ。髪は栗色で顔も整っている。女の方は男よりちょっと歳上ぐらいで黒髪のショートヘアーだ。
「アンタが新人の優斗だね。アタシは黒柳玲。玲って呼んでもらって構わないよ。」
「俺は諸矢類。呼び方は指定しないから、好きに呼んでもらって構わない。」
「ちょっと待って下さい。何で僕の名前知ってるんですか!?」
「アハハハハハッ!こんな間抜けな新人は初めてだよ。
だってアンタ、自分から名乗ったじゃないか。」
「え?」
(僕の名前、警備員さんにしか教えてないはず。
なのに、どうして。)
「戻りました~。」
優斗の背後の扉が開く。
「ジロー、お帰り!
わたしのケーキ、手に入った!?」
「あ、はい。皆さんの分もあるので、どうですか?」
「お、いるいる。」
玲や諸矢が青年の周りに集まる。
「新人さんですか?ボク、草薙二郎って言います。宜しくお願いしますね。優斗君。」
草薙と言う青年は茶髪で、体形は細身だ。
黄色のニットに身を包み、腰には青いパーカーを巻いている。
「あの、どうして僕の名前が分かったんですか?」
「彼処に立っている警備員に名前、教えただろう?それでアタシ達のところにも無線で連絡が入る訳。
相手の名前に性別、それに見た目や性格までもね。」
「それが彼奴の能力だからな。」
伊川優斗 能力名『銀狼』
草薙二郎 能力名『二次空間』
黒柳玲 能力名『七変化』
諸矢類 能力名『命の頃合い』
エリカ ???
絹傘環 能力名『鑑定眼』