JOU-ZAI
10年後、この世はどうなってんのか?300年後はいったいどうなってんのか?そもそも世なんてあんのかな?どうなるかなんておいらにもわかんねえ?今度の話はちょっとした未来についてで、これをフィクションととるかノンフィクションととるかは~任せる!この話が実際に起きたらおいらはちょっぴり寂しいぞ。
2×××年、我々の急激な増加、突然のバトルロワイヤル荒れ果てた土地により食料不足が深刻な問題となっていた。生き残った研究者たちは、一斉に研究を始めた。自分たちが生き残るためにはどうすればよいのかと。
「 JOU-ZAI 」
2cmほどの小さな錠剤。これを1日3回飲むことで我々は食事をせずとも、何不自由なく生活することが出来るようになった。4種類あって、色で呼び方を変えている。赤色がトマト、黄色がレモン、緑色がキュウリ、白色がゴハン。我々は1度も食べたことは無いが、トマト、レモン、キュウリ、ゴハンは昔食べられていたとされている食材を元にしているらしい。
「よし、トマトにしよう」
今日の昼は、トマトにしよう。4種類の中ではトマトが一番好きだ。
赤い錠剤を鞄から取り出しては、水も含まず、直接口にする。口の中に入れると40秒くらいかけてゆっくりととけていく。ほんのりと甘さを感じることが出来る。1錠だけで、お腹は満たされる。これで8時間は何も口にしなくていい。
「1分35秒」
我々が食事にかける時間はこれくらいだ。
本気を出せば30秒切ることも可能だ。もう食事と呼べるのかも分からない。
「時代は変わり、わしらには住みにくくなった」
205歳のおじいさんはこう語る。わりとはっきりとした口調で。平均寿命が302歳の世の中ではおじいさんはまだ中堅だ。
医学の進歩により、人間はいっそ 死ねなくなった。衰えるスピードも遅くなったため、いくつになろうが元気に働くことが出来る。AIに仕事を盗まれていったというのに、経験豊富な技術者が後を譲らないために経験のない若者たちは、仕事も経験も与えてもらえない。
「 JOU-ZAI 」には必要な栄養素がたくさん入っているため、決められた通りに飲んでいれば、疲労もほとんどない。睡眠時間も4時間でよくなった。睡眠と食事の時間を絞って何をするのか、それは仕事!ただでさえ、人手が余っているので、会社の役員たちは社員をクビにするための理由を日々探っている。遅刻、欠勤が多いやつはすぐにクビ。
「仕事、仕事と最近の若いものは仕事しかせんのか?つまんない、わしは納得できん」
この世では、休日という概念が完全に無くなった。人は余るほどいるため、シフト制を用いる必要がない。会社は毎日のように稼働する。その中で自分が行きたい曜日や日にちだけ出勤すればいい。いつ休んでもその人の自由だが、幹部が常に目を光らせていることを忘れてはいけない。仕事を与えてもらった若者たちは、クビにならないために毎日出勤する。休んでる場合ではない、仕事をもらえるだけでありがたい。
食料不足の影響もあるが、「JOU-ZAI」の登場により、食事をする必要性がなくなったので、飲食店はあっという間に次々と閉鎖された。医療関係も医学が進歩し過ぎたせいもあり、人は病院に来ない。来たとしても1度の診察でほとんどが完治してしまう。「JOU-ZAI 」関連の仕事は強い。製造、販売これからもうなぎ登りだ。他に画期的なものが発明されない限り。
研究者たちは日々、研究に没頭する。新たな商品開発に成功することが出きれば人生が変わる、億万長者も夢ではない。
「美味しいご飯が食べたいのお」
205歳くらいだとギリ 本来の食事というものを知っている。本来の食事を知らない我々若手にとってはこれが当たり前だと思っているので、なにも辛くはない。だが、知っている者に関しては、本来の食事を行うことで得られる幸福、話によれば昔は食事というものにはもっと選択肢があったようで、ピザ、ラーメン、スウシ、タキコミゴハン、カラアゲ等味はおろか形も全く違って、食感というもの味わうのとができたらしい。
そういわれれば考える。
「JOU-ZAI」は我々 人間から何を奪い、何を与えたのか。もとをいえば、バトルロワイヤルなんて起こらなければこんなことにはならなかったか。
「あ、仕事仕事、無駄話してる場合じゃなかった」
今日もまた、20時間くらいは仕事をするんだろうなあ。