thinking17『みんなみんな、クランの末裔⑰』
「おおおおお…!」
人間は…
追い詰められるとここまで進化するのか…
…強い…
…戦わなくてもわかる…
さっきまで…
たったの149回メスの斬撃を受けただけで…
…へばっていたのに…
ぞおおおおおおおおおおお!!!!
殺人衝動!
何年ぶりだろう…この気分は…
そうだ…思い出した…
僕は…
平等以外…許せなかったんだった…
桜原棘は、実に10年ぶりに、笑った。
「ハハッ…」
だが。
「『アブソリュート・ワ【絶対なんて…」
「…?」
「【存在しない!!!!!!!!!!!!!!】
「…⁉︎」
い…今のは…マゼンタ・エモーション⁉︎
「な…なんだ…これは…」
「ありえない…『マゼンタ』は…」
「絶対効かなくしていた…のに…」
「…」
「…」
「…」
「…ああ、」
「それはなあ桜原棘」
「話すと長くなる」
「薙紫紅…いったいどうやっ」
グサッ
「…?」
何か、おかしい音がした。
聞いたことの無い音がした。
「⁉︎…」
…⁉︎
め、メス⁉︎
そう、桜原棘の右肩に、
メスが刺さっていた。
刺さって、
いた。
そして、彼はいまさら気づいたように、
「…!」
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「話すと長くなるから…」
「ああああああああああああああああああ」
「一発で聞けよ?」
「あああ!!!!…い、痛い…」
「まあでも簡単なことなんだけどな」
「【クリムゾン】でお前と運命を共にした」
「つまり、両方とも『絶対負けない』」
「そして『引き分けもない』となった」
「矛盾するよな?」
「ではこういう時はどうするのか?」
「能力のレア度…つまりグレードで優先が決まる」
「負荷能力は封印能力よりレアらしいぜ」
「つまりまあ、俺と一緒にいるかぎり」
「お前に『絶対』は訪れないわけだ」
「…もういい…!」
「…保険が効かなくても…君は殺せる…!」
「どうやって」
「…こうやってだ!」
「『絶対殺せるメス』…!」
「これが僕の本気だ!」
10本を、心臓と脳天に向けて放つ!
が、しかし。
「そうか」
「なんつーかお前…」
「残念だったな」
「…は?」
その言葉を桜原棘が聞いた時、
その意味を理解する!
ま、まさか…
いや…そうに違いない!
『絶対』間に合う!
飛んでいるメスに追いついて、
桜原棘はメスをバシッとふり払う!
これが当たっていていれば…クリムゾンの効果で、
僕まで死ぬ所だった!
「かかったな」
「…え?」
!
ここは!
「俺の拳の…」
「ぜ、『絶対効かな…」
「射程範囲だ!」