Chapter3『達成使いは夢を見る③』
委員会とは名ばかり…
なんにもしないじゃないか。
ただ集まって解散って…なんだそれは!
廊下をズカズカと歩く薙紫クレナイが1人。
彼が不満なのも無理は無い。何を隠そう、
彼がこの異常を極めた学校に来た理由は、
『青春』するためだったからだ。
彼は立ち止まる。
「くそ…これじゃ、中学と何も変わらねえ…」
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absoluteZero=crimson
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彼は幼少の頃を思い出す。
聞こえてくるのはサイレンの音。
薙紫 紅は事情聴取をされていた。
「クレナイ君…君はどうしてあんなところに?」
「紙飛行機が飛んで行って…」
「たまたま事件現場にねえ…」
「もういい、この子を返してやれ」
「はっ…」
…俺はその頃からある能力を持っていた。
能力といっても、
元からもつ『才能』とか、
与えられた『異能』とか、
そんなところには分類できない能力だ。
俺はそれを、自分の名前からー
【クリムゾン】と名付けた。
能力は常時発動している。そのせいで…
「あの子、紙飛行機と言ってましたが…」
「…監視カメラにも怪しい点はなかった…偶然だ」
「しかし、お言葉ですが総司令官」
「いくらなんでも偶然ではないのではないでしょうか」
彼が第一発見者になるのは、これで50回目ですよ?
ー身の回りのあらゆる事件に巻き込まれるー
俺が成長すると【クリムゾン】は、
自らに冤罪をかける能力に変わっていった。
中学3年の夏、ある手紙が届いた。
内容は、
『社会的死通知』と『天角学園入学通知』。
これが世界のやり方だ。
社会的に抹殺した上で、学校内で管理する。
要するに『臭いものには蓋をする』ということ…
俺も能力によってその臭いものの一員となった。
だが、それでもいいと思った。何故なら、
大量の冤罪によって俺は中学時代、
青春が送れなかったからだ。
24時間警察に監視される日々は、
苦痛でしかなかった。だから、
この天角学園でなら青春が送れる、と。
そう思っていた。
だから、委員会はちゃんとやりたかったのだ。
彼は歩き出し、教室に帰ってきた。
「おっクレナイ君、ご苦労ご苦労」
「苦労したかったですよ…」
だがまあ、全て希望が無いわけではない。
こうして学校に無事来ることができるだけでも、
俺は幸せだ。
周りは物騒な人達かもしれないけど…
…だが
薙紫 紅は何もわかっていなかった