ghost92『僕達はダーク・バランス㉚』
なかった。
「うん…うん。なんかさあ、あんまりこういうことは言いたくないけどさ」
「お前、身の程知らずだよ」
「…」
まるで礼儀を知らないかのようにそう言われて、彼女は悔しかった。近藤いつみは惨敗し、横たわっていた。
そして、こう思っていた。
やっぱりか。やっぱり負けるのか。こんなにあっさり負けるのか。私のこれまでの修行はなんだったんだ。
「…まあ、でも褒めてやるよ、火が出るだけであそこまで張り合うとは思ってなかった…」
「相手対処できるようになるまで強くなれる能力である『事象艦壁』に対して五分以上粘ったのはお前が7人目だ」
「…殺してくれ」
「まさか」
「殺すわけねえだろお前みたいな奴」
「将来が楽しみだ。また戦いたい。」
「…」
妥協をやめた怠け者とはこういうことも含めてのことなのか。どんどん戦意がなくなっていく。もう、
戦いたくない。
「まあ待ちなさいよ」
その時。中から外への一方通行の結界が崩れ、1人の女が現れた。そう、時破田心裏が。
「…!!」
「どこへ行くの?勝負はまだ終わってないよ」
「…マジかよ」
今の彼の心境は手短に言うとこうだ。
『やべえ』。何故なら彼は知っているのだ。
封印能力者は方法は違えど皆、魂を操ることができると。だから、躊躇なく殺すと。
実は彼はそんなことを思っている間に数回死んで生き返ってるのだが、それに気づかないくらい彼は焦っていた。
「ふざけんなよ…お前はよ…なんでここにきた…こんな…子供の積み木に建築士が割って入るみたいなことして楽しいか…?」
「例えが悪いね。この子は遊び感覚でやってるんじゃない。」
「と、時破田さん…」
制裁を加える。
凄まじい攻撃が彼を襲う。
その中には炎もあった。
「…」
「立ち上がれよ根性なし」
「…降参だってば」
「チッ」
「俺が悪かった…から」
「後味が悪いなぁ…あたしも自分が何を言いたかったのか忘れちゃった」
「…」
「でも、これだけは言わせてもらう」
「なんだよ」
「君の思想をテレポートした」
「!」
彼女はこう言う。
「人生とは『自分』…ねえ。まあ、能力の便利さの割にはまともな性格をしているようだけど、あたしに言わせればまだまだだわ」
「…何が言いたい」
「あなたはその自分を理解できていない。ごちゃ混ぜなのよ、あなたは…。…大切にしたい物の定義もはっきりしていない…まずはそこからやり直しなさい」
「…何を」
「自分を、そして人生をよ」
「…」
愛谷は敗北した。
そして、紅と槍の決算が始まる。