ghost88『僕達はダーク・バランス㉖』
「しかし攻撃のレパートリーが少ねえ」
「剣飛ばすだけじゃダメだぜ」
「…ぐ…」
余の力が…全く…!
「…んじゃま、ピンチも切り抜けたし」
「そろそろフィナーレと行こうか」
まだだ…
まだ余にはこれがある!
「最後に聞いておく…」
「お前にとって人生とはなんだ?」
「…ふふ…余にとっての人生か…」
「人生とは『幸せ』だ」
「正しい。」
ナイフで刺すつもりか
林道栄徹は真っ直ぐ向かう!
ただのナイフではない
『具現隷骸』で命中率を100%に!
もう勝ち目はない
そんなわけはない!!!
武器倉庫のレイピアと余の距離をゼロに!
はるか昔の初代より続く剣術!
これなら確実に
ナイフを持っている左腕を刎ねられる!
「ぬ…ぐっ」
いやまだだ
こいつは殺人鬼
片腕が無くなっても止まるとは思えない!
「…おい」
「左だけでいいのか?」
「‼︎…」
これは、まずい!
【翼流針剣剣術】『先闇潰し』
左目を潰す!!!!
嫌な音がした。…がしかし、
「だから」
「左だけでいいのか?」
「お、お前…」
林道栄徹は足だけで素早く靴下を脱ぐと、
足の指でナイフを拾い、
翼村未玖のボディ下から上へ斜めに切り裂く!
「がああああああああああああ‼︎」
ナイフを回転させもう一度指で掴むと、
体を捻り、レイピアを切って破壊する!
「『クールに殺す』」
こいつで、終わりだ。
しかし
彼が翼村未玖を殺そうとしたその瞬間。
彼の動きが止まった。
「…」
もしここでこいつが死んだら
こいつの人生はどうなる?
こいつに救われた人たちはどう思う?
こいつに頼っている人たちはどうなる?
彼はこの時初めて、
自分が今までしてきた事の重大さを理解した。
奇しくもというかなんというか、
翼村未玖のダーク・バランス、
『裕福を捨てた権力者』は彼に届いた。
「俺…今まで何やってんだ?」
「あれ?」
「え?何してたんだ?」
彼も夢から覚める時が来た。
彼は気づいたのだ。
翼村の考え方と捻じ曲がった能力に触れて。
“どれだけ正当化できても”
“正しかろうが正しくなかろうが”
“俺は悪なんだ”
「う…嘘だ…」
「ヒーローにできないことをしてただけで…」
「倫理の外側から倫理を守ってて…」
「…あれ…?」
「おかしいな」
「俺…人殺しなんだよな」
「お、おい、貴様、どうした、大丈夫か?」
俺人殺しかよいやでも俺は悪じゃなくていや悪ででもヒーローができないことをなんとかして
眠い
眠い
眠い
「《マゼンタ・エモーション》」
「全く危なかったぜ…あと数秒遅れてたら…」
角から薙紫紅と巫槍が現れる。