ghost87『僕達はダーク・バランス㉕』
例外を作り出す能力は、
言ってみればチートである。
何故なら、
「…俺は時破田じゃねえ」
「そしてお前…翼村未玖でもねえ」
「俺は弱い」
「だが」
「これから三分間」
「俺に強くなることを許してくれ」
「『具現隷骸』」
「…おい」
「今なんと言った?」
「…」
「貴様!今なんと言ったか聞いているのだ!」
剣が。翼村未玖を貫く。
まるで距離が極端に短いかのように、
超高速で飛んでいった剣が。
「うぐおあああああああああ⁉︎」
「そうだ…」
「相手の弱点を探すヒーローなんていねえ」
「ヒーローはいつも自分が強くなるんだ」
「き、貴様まさか…」
「なんて言ったか…って聞いてたな」
「これから三分間で」
「お前を倒せると言ったんだ!」
具現隷骸。
林道栄徹が三分間だけ『絶対虚無』と『テレポーテーション』を得るという例外を作り出した。
「き、貴様…」
「今すぐやめろ!危険だ!」
「ダークバランスの能力は特殊なのだ!」
「はぁ?何言っ
その時。林道栄徹の体に斬撃が!!
「…うおあああああああああ!?」
「…だから言ったんだよ」
「ダークバランスは能力を捻じ曲げている」
「お前は自己完結らしいがそれでも駄目だ」
「普通の人間にそれは扱えない」
「さあ、わかったろ」
「死にたくなければ余に従え!」
「…いぎっ…があああああ!」
「おい何してる早くしろ」
「嫌だね…」
「わざわざリスクを捨てろだって…?」
「ふふふ」
「それはヒーローのすることじゃない」
「正しくない」
「そんなことを言っている場合ではない!」
「場合…?」
「わかってねえなぁ、お前」
「これが普通なんだよ」
「俺は変なことはしてない…いつも通りだぜ」
「そしていつも通りにしてたお陰か…」
「薙紫の野郎に弱体化されてた殺人術が」
「今!完全に元どおりになった」
「林道栄徹完全復活だぜ」
「!」
ざ、斬撃が…やんだ…⁉︎
嘘だろ…⁉︎何故…⁉︎
「パンが無ければガトーショコラを食ったような少年時代を過ごしたお前にはわかんねえだろな」
「これは『クールに殺す』完全版のお陰だぜ」
「そして」
「俺は今」
「さらに封印能力三つと」
「大量の殺意と大量の自己完結を持つ」
「さあどおする?未玖君?」
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「ずるいよ薙紫さん」
「殺意を思い出させるなんて」
「みっくーが人殺しの圧に耐えられるわけないじゃないか汚いなぁ」
「…」
「まあ、そうかもな」
「までもそれはこれでおあいこってことで」
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「ハァ…ハァ…ハァ…」
「すげえな未玖君」
「まるで召喚術師みたいだぜ」