ghost86『僕達はダーク・バランス㉔』
もっと世の中を良くしなければ!
林道栄徹は人殺しに励んだ。
何?強姦しようとしてる?殺す!
何?強盗しようとしてる?殺す!
何?人を殺そうとしてる奴がいる?
…ちょっとそいつの話を聞こう。
「ざん」
「うん。そうか」
「ざんざん」
「うわあ…それは酷い」
「ざん!」
「うん。それじゃあ仕方ないな」
「よーしみんな!新しい仲間だ!」
アスクブランクの初期メンバー、
青土時雨は後に聞いた。
お前は割と出来た人間なのに、
何故殺人をするんだ?と。
彼はこう答えた。
「殺人鬼に回ってこない幸せがあるように」
「殺人鬼じゃなきゃ回せない幸せもある」
「俺は法の外から人を助けたい」
倫理から外れなければ倫理を助けられない。
彼はそういう正義を持っていた。
『正しい』『但し』『例外はある』
いつしかそれは彼の口癖になっていた。
ーーーー
もっと世の中を良くしなければ!
彼は距離を操って人々を救い続けた。
が。
一つの疑問が生まれた。
『あれ?世界が良くなってないじゃないか』
助けた奴が悪さをしていた。
助けた奴は幸せそうじゃなかった。
おかしい。
なんで?
確かに不幸は取り除いてやったはずだ。
それがなんで?
彼は気づいてしまった。悪は消えないのだと。
人間には必要悪が無ければいけないのだと。
それでもなんとか、
必要悪になる人間が出ないように、
なんとかしようとしていた時、
巫槍に出会った。
巫はある一つの答えを教えた。
『君が必要悪を被ればいい』
その日から彼はダーク・バランスになった。
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自己完結は、
ヒーローに出来ないことをするヒーロー。
彼は、ヒーロー活動が楽しかった。
しかしそれもその日まで。
「この虚数空間の外側には例外が存在しない」
時破田心裏は格が違った。
そして少年は気づいた。
俺は弱いからヒーローじゃない。
ヒーローは正しいから絶対に負けないんだ。
なのに俺は負けた。
つまり俺は正しくなかったんだ。
「…俺は…八方塞がりってことか?」
「ええ」
「…そうか…」
「もう悪さはしないこと!わかった?」
「…やだね!」
「但し…」
「お前が正しいってんなら…」
「真似させてもらうよ」
「…ええ」
「あたしはいつも、正義の頂点にいるわ!」
「だから、あなたも登って来なさい!」
この日から彼は時破田心裏に勝つ事を目指す。
「…さぁて、引かずにどーするかな…」
どうしようもない気がするが、
どうにかしないといけない気がする。
ああ、
時破田なら、
距離とか気にせず動けるんだよな…
あ
その手があったか!!!!!!