ghost84『僕達はダーク・バランス㉒』
監視カメラをハッキングして、
戦いの様子を見る2人。
「おやおや、ダメじゃないかみっくー」
「せっかく椎名君がカッコよく勝つとこだったのにこれじゃあ台無しじゃないかー」
「僕は薙紫さんにどんな顔を向ければいんだよ」
「‼︎…」
「うっそだろ…」
「嘘じゃないでしょ」
「ま、仕方ないですよ、みっくーは…」
「封印能力者ですから」
「…不思議だな」
「じゃあなんでお前がリーダーなんだ?」
「ん?何故って」
「みんなやりたくなかったからですよ」
「…あっそ」
「しかしこれはマズいことになったな」
「どうだ?お前から見て」
「うちの栄徹はそちらの未玖に勝てるか?」
「無理ですよ」
翼村未玖の封印能力『絶対虚無』は、
絶級能力に最も近い封印能力ですから。
ーー
「クールにだと?もしかして、」
「余に攻撃する方法が見つかったか?」
「…うるせえ」
やっべ、どうしよ。
こいつには攻撃が届かないんだったな。
しかも何故か封印能力同士なのに消せないし…
「ふふ…悩んでいるようだな」
「ようし、余も外道ではない」
「ヒントをくれてやろう」
「①」
「『絶対虚無』は回避系防御能力だ」
「②」
「幼児期から使っている為熟練度が高い」
「つまり」
「わかりやすく強敵ということだ」
「レベル1の勇者と魔王…」
「…とまではいかないが」
「持っている剣はレベル1という感じか」
「…」
これはまずいよな…
俺の経験則が当たってるなら、
俺の『具現隷骸』はあいつに届かない。
そもそも“絶対”のつく魔法は、
世界にある法則を勝手にどうにかする力…
法則を生み出すだけの“具現”の超能力では、
分が悪すぎる…!
「『絶対虚無』は」
「先ほども言ったように距離を操る」
「貴様から余への距離を無い物とした」
「だから貴様のあらゆる能力は余に届かない」
「逆に」
翼村未玖が剣を投げ、
その直後に林道栄徹に刺さる。
「…ぐぶ…⁉︎」
「余から貴様への距離を極端に短い物とした」
「もっとも貴様に物理攻撃は効かんようだ」
「剣による攻撃は無駄のようだが…」
封印能力『具現隷骸』はかなり強力だ。
…が、それは下と比べた時の話で、
結局の所、具現隷骸には積み重ねが足りない。
殺しを始めてから身につけた青い能力では、
小さい頃から能力で遊んでいた時破田に、
小さい頃から能力を行使してきた翼村に、
絶対に勝てない。
でも。
「…ここで引き下がる訳にはいかねえよ」