struggle5『封印クライン⑤』
ん?
あれ?なんかこの話の流れ…
リリー・シエルは感謝する。
「あなたのおかげよ」
「負荷能力者のあなたがこの町に来てくれたおかげ」
クリムゾンは消してもらうはずだったんだけど…
「私達が本気を出せば世界を破壊できる」
「でも理事長の封印はそれより強かった」
「あなたという糸切りハサミがいなければ私達は一生捕らえられたままだったかもしれない!」
声を合わせて
「本当にありがとう!」
頼みづらい!
というか、
これでもう消してもらうわけにはいなかくなったな…
他の封印能力者を助ける為には負荷能力が必要…か
「大丈夫だよクレナイ」
「そうよ」
「?」
「私達は封印能力者で、あなたの味方」
「あなたが何かに巻き込まれても、私達がいる」
「クリムゾンの負荷は私達で支払う!」
「…!」
「ありがとう…」
「いえ、ごめんなさい」
「私もあなたのことを考えずに鬼畜な真似をしたわ」
「…先に断れなくしちゃってごめんなさい」
「いいよ」
「じゃあでてってくれる?」
「「またそれか!」」
「何?本気で泊まるつもりだったの?」
「3人で?」
「ないないだってこの部屋六畳だぜ?」
時破田心裏は諦める。
「んー…じゃあ空き部屋ってのに行くわよ」
「でも待って」
「今…誰か家の前にいるわよ」
「えっまじ?」
するとリリー・シエルは少し驚いてこう言った。
気づいてなかったの?
「ああ」
封印能力系女子の2人は疑問に思う。
確かに玄関前の奴は気配を消しているが、
気づけないことは無いはずだ。
だって『薙紫紅』は裏の業界で禍々しい通り名が付けられたりしている人物なのだから。
尾行なんてされるはずがない。
と、そこで彼は何かを察し、わけを話し始めた。
「全く気づかなかった」
「やっぱ君らのようにはいかないよ」
「なんせ俺は…」
ドアを開けると、
そこにはステルススーツで眠っている女の姿が。
「引き分け師に過ぎないんだから」
そう。それが彼。
感情を操る『マゼンタ・エモーション』は確かに強力だし、
無理矢理運命を共にする【クリムゾン】も使いようによっては強い能力だが、
彼本体はただの高校生だ。
相手がなんでも破壊できる不老不死でも負けない。
でも、彼は高校生だ。
ただの高校生だから能力者には勝てない。
だから、彼は自分を『引き分け師』としか呼ばない。
最強と呼ばない。
「美樹巴先生…許されたんだ、よかった」
「でもだからって暗殺には来ないでほしいな…」
だがリリー・シエルはこう考えた。
もしかしてこいつは使えるかとしれない、と。