ghost74『僕達はダーク・バランス⑫』
烏丸 憂
彼が本気を出せばどうなるか?
答えは一つ、
人間の限界が見れる。
彼は生まれた時8歩歩いて「あぶぶ」と言い、
翌日には父親を片手で持ち上げた。
そのペースで成長していった彼は、
無能力者にも関わらず擬似時間停止が使えるというようなミラクルを起こせてしまえる。
尊敬していた父親の死を乗り越えて、
自分の限界に挑戦してきた少年。
他に比べれば薄っぺらい過去かもしれない。
しかし、彼の頑張りは分厚い。
他に比べれば薄っぺらい個性かもしれない。
しかし、彼の積んできた努力は計り知れない。
彼は出来るだけ時間を引き延ばす。
勝つ為の作戦において、
最高の体勢を探し出した。
構える。
斬撃は引き延ばした時間でもゆっくり動く。
彼は、
その斬撃を殴る。
解除!!!!
ドオオッ!!!!!!!!!
いつの間にか。
烏丸憂の拳がバリアを破壊している!
そして!
「な、何‼︎」
「人生は傷の多さじゃねえ」
「傷から守った人の多さだ!!!!!!」
「お前がお前自身を!!!!!」
「履き違えてんじゃねえ!!!!!」
それは普通の拳。
一撃で絶命するでもない。
しかし、彼は本気で、
普通の高校生らしく、『喧嘩』した。
拳は顔に当たる。
「があ!?」
「俺はいつもこう言うことにしてるんだ」
「『親父は俺より年が上』」
「『されども俺より慧が下』ってな」
「な…一体どうやって…」
「『司ル者ノ楯』は作動していたのに…!」
「…簡単なことだよ」
「斬撃とバリアをぶつけたんだ」
「お前を一瞬だけ怯ませることで」
「斬撃を引き戻させてな」
「怯ませる…?拙者は怯んだ覚えは…」
「無くて当然だ」
「俺の出すオーラとやらは」
「科学でも魔学でも説明できないようだから」
「…馬鹿な…」
「まさか気合いで跳ね返したとでも…⁉︎」
な、なんと。なんという男だ。
こいつ…勇敢すぎる!怖くないのか⁉︎
「…とはいえ、オーラで1発だ」
「次の拳は約束違反ということになる」
「つまり俺の負けだ」
「!」
「…いや」
「拙者は大きく負けていた」
「烏丸君、一つ教えてくれないか?」
「ん?」
「君はどうして、会ったばかりの拙者のことを本気で考えてくれるんだ?」
「…」
「んー…なんていうか…」
「俺は、こう思うんだ」
「正義は悪を、強者は弱者を守るべきだって」
「…」
「当然のことをしたまでだよ」
「さあ!和解したんんだし仲良く視聴覚に…」
ドガァンッ!!