ghost72『僕達はダーク・バランス⑩』
「そういえば『ダーク・バランスは防御魔法しか使えない』という嘘の情報が出回ってるらしいが」
手をポケットに突っ込む。
「拙者は超能力者だ」
「そして吸収系防御能力を使う」
「言っちまって良かったのか?お前」
「もちろん」
「何故なら拙者は負けることがない」
「試しにやってみるか?」
「おう」
全ての覚醒・『カイザーナックル』!!!
普通の人間が生身で出せる最大威力!
が、しかし。
「…⁉︎」
「貴様、その程度で拙者に立ち向かうか」
「生憎、その程度で拙者は倒せんぞ」
「ま、全く効いてない…⁉︎」
全ての覚醒、つまり、
身体能力の全てが異常に高い烏丸憂には、
『異能殺し』と呼ばれていた時期があった。
人間が視認できない速度で動き、
喰らえば一撃で絶命する威力を出す。
レイバードのS級殲士についていける。
そういう、
異能に匹敵する身体能力を持っていたから、
能力犯罪者からはそう呼ばれていた。
が、この『刀を捨てた武士』はどうだ。
こいつの能力は、パワーでなんとかなるか?
スピードがあっても仕方ないのではないか?
ーーーー
「完全オート発動の防御能力者が相手なのに」
「どうして彼をチームに入れたんですか?」
「薙紫さん」
「うちの黎明には不利すぎますよね」
「…特に意味は無えよ、ただ…」
「ただ?」
「資料見て、あいつを突然思い出しただけだ」
ーーーー
「これが拙者の能力『司ル者ノ楯』」
「自分がこれまでに受けたダメージを使える」
「つまり簡単に言うと」
「お前を簡単に断裂できる」
「…」
ーー諦めるな。
わかりました。
ーー弱点を探せ。
弱点は無いです。
ーーならば長点を探せ。
はい。
「…お前の『司る者の楯』の長点は」
「?」
「相手の攻撃を吸収することで無効化でき」
「食らってもその場で同じだけ反射でき」
「食らわなくても斬撃を使える所」
「つまり物理攻撃しかできない俺のような奴は簡単に完封できてしまう」
「…やはり俺はお前に勝てない」
「おっと、負け逃げすることは許さない」
「それは約束だろ?」
「ああ。約束だ。」
「じゃあ黎明、俺とも約束しよう。」
「…?」
「次の連撃に耐えられたら、俺の負けだ」
「俺はお前達の側につく。」
「!」
「…いいだろう」
「だがパワーでは『司ル者ノ楯』は破れん」
「無能力者のようだが、どうするつもりだ?」
「そりゃまだ秘密だ」
「そうか」
「ああそうだ、これも約束だったな」
「全力で来い」
「おうよ」
全ての覚醒!