Chapter13『達成使いは夢を見る⑬』
都賀生命は焦る。
いや実は焦らされているのだが、彼は気づかない。
「『達成』、マゼンタ・エモーション」
「おおおおおおおおおお!」
「まずい…まずいぞ!」
…【クリムゾン】を使わなくていいことを祈ろう
前に試した人殺し共は、
あれで心を失くしてしまったから。
非常に異常に危険だ。
都賀生命は思い出す。
昔読んでいた漫画に出てくるキャラクターを。
すっごく強くて、
すっごく速くて、
すっごく賢くて、
不死身で、
そんな、男子なら一度は憧れる奴。
倒せる奴なんて、絶対いない!
絶対いない!
いた
いる
目の前にいた…
目の前
に
いる!
どうやって倒せというのだ!
私の【黒刀】がなんでも切り裂けても、
最強のキャラクターが最強の技を使っても!
『マゼンタ・エモーション』
感情を操るだと!
しかも、それが【能力じゃない】だと⁉︎
そんなの、どうしろというんだ!
『勝つ』とか
『倒す』とか
『消す』とか
『殺す』とか
『全部忘れてしまうじゃないか!』
達成して身についたことは絶対に『消えない』…
二足歩行で歩けるように!
言葉を話せるように!
…いや、それ以上だ
いつの間にか『人間に生まれた』ように!
いつの間にか『魂』や『感情』が存在したように!
駄目だ
この天角学園の中でも、こいつに勝てるのは…
多く見積もっても…『2人』…
『理事長』と『生徒会長』…
あの化け物共じゃないと、
この化け物には勝てない!
化け物だ!
薙紫紅!お前は!
理事長や生徒会長に並ぶ化け物なんて、
もう地球上にいないと思っていたのに!
いた…いたのか…『反則』が…
人間なのに、人間じゃない。
薙紫紅は人間じゃない。薙紫紅は人間じゃない。
周囲の因果に引き寄せられ、ゼロに戻す…
『クリムゾン』…『マゼンタ』…
これじゃあまるで本当に『死神』だ…
バタッと。
都賀生命は倒れた。
与えた感情は、
『眠い』
本当に、実にくだらない勝ち方である。
1年1組、凶悪犯罪者クラス。
「『キャンデイ先生』」
「…名前、知ってたんですか」
「今調べてたら、出てきたんですよね」
イギリス史上最強の殺し屋が日本に亡命し、
天角学園に捕らえられて教師をしてるとか…
能力は『魔法』、【ダークエンジェル】。
名前はキャンディ・ベル
「まあそれはバレてる内のランキングですけどね」
「で?どうかしました?」
「いやこれ、」
教室のドアが開く。
「リリー・シエルなんですけど」
「こんにちは」
「…」
「…」
「はあああああああああああああああああああ⁉︎」
〈天角学園今年度入学生/終わり〉
薙
→薙ぎ払う
紫
→悪のイメージ
紅
→①熱い
→②暮れない(終わらない)
薙紫紅
→悪を薙ぎ払う永遠の灼熱